大阪メトロの配線図を見ていると、「XT・YT・ZT」というワードが出てきます。
いずれも「軌道回路」という、線路の上に電車がいるかどうかを判断する信号装置のシステムで用いられるもので、一定の区画にわたって名前を決めているものとみられます。
大阪市交通局・大阪メトロの文献を見ていると、引き上げ線の場所を「XT・YT」などの軌道回路名で呼んでいることが多いのです
…が、何故「XT・YT・ZT」と呼ばれるのかについて、書かれている文献は今のところ見当たらないのが現状です。
ひとまず、現段階で分かっていることをまとめました。
(調査協力:新御堂筋様)
XT
エックス・テーと呼ぶようです。
緑木公開時などで現場の方に話を伺った限りでは、駅の手前で一旦止まる場所のことを指すようです。
1983年に出版された「大阪市地下鉄建設五十年史」の902ページには、
谷町検車場地上部(現2号線の側線XT区間上部)
との記載があります。
また、ニュートラムの建設記録には
車庫内の入出庫点検1番線、2番線およびXT(手動→自動切替区間)
とあります、手動や自動はニュートラム特有の事情とみられます。
ちなみにこの「XT」という文字は国鉄や京三製作所でも使用例が見られ、ここでは「XTといわれる軌道回路」「列車番号検出軌道回路」という記載があります。1)
JIS規格”鉄道信号用文字記号”では「進路中継用,踏切警報機用」と記されています。
YT
こちらもワイ・テーと呼ぶようです。
現場の方に話を伺った限りでは、場内信号のことを指しているそうです。
JIS規格”鉄道信号用文字記号”では「てこ反応用,ヤード用」と記されています。
ZT
こちらは聞いていないのですが、XT・YTのことを鑑みると「ゼット・テー」でしょうか。
駅発信号のことを指しているそうです。入換線?のことを指しているとの話もみられます。
昭和15年の文献 2) にはインピーダンスボンドを指すと記されていますが、これは国鉄特有のものでしょうか…?
JIS規格”鉄道信号用文字記号”では「誘導の,進路照査用」と記されています。
RT
これはおそらく、乗り場の線路のことを指しています。
大国町4番線なら「大国町4RT」でしょうか。
関連リンク
参考文献
- 日本鉄道サイバネティクス協議会「鉄道におけるサイバネティクス利用国内シンポジウム論文集 第9回』,1972年,140p
- 藤原孝一 著『信号保安設備』,鉄道工学会,昭15. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1245800 (参照 2025-05-23)