2025年4月11日、大阪メトロが計画していた15駅のリニューアルが、ほぼ完成しました!
「Osaka Metro 地下空間の大規模改革」と題されたこのプロジェクトは、総工費300億円をかけて15駅をブラッシュアップするリニューアル計画で、「明るくなった」「垢抜けた」など、好評をもって迎えられています。
ここでは15の各駅について、その詳細な計画と実写真をまとめました。
御堂筋線
新大阪
デザインコンセプト:「近未来の大阪」
工事期間:2019年1月~2020年4月
備考:駅リニューアル第2号
Osaka Metroからのコメント 1)
関西の重要な結節点(リニア、新幹線)として、発展を続ける大阪の玄関口。現代技術による作りこみと、自然光を取り入れる膜屋根やホーム北端部の展望待合スペース「トレインビュースポット」を調和させることで、近未来の駅のあり方を表現しています。
当初計画図
当初イメージ案。展望スペースは現実的なラインに収まりましたが、コンセプトは変わりません。
中津
デザインコンセプト:「インキュベーター発信源」 “ Incubator Central ”
工事期間:2017年5月~2020年3月
備考:駅リニューアル第1号
Osaka Metroからのコメント 1)
スタートアップ企業をはじめ、大学や専門学校による新しい取組みなどをプレゼンテーションできる場所として「 Incubator Central 」をコンセプトとしました。
天井にはホワイトリボン(白い帯状の天井)を設置して人の流れを促し、柱にはサイネージを埋め込み、プレゼンテーションスペース(Nakatsu Incubator Central)との連携を図りました。
中津駅のデジタルサイネージ「Nakatsu Incubator Central 」については、アーティストなどの条件があるものの、無償での配信が可能です。
当初計画図
当初のコンセプトは「プレゼンテーション」でした。
梅田
デザインコンセプト:「大阪から世界へ」 “ From OSAKA to the World ”
工事期間:~2019年12月
備考:「地下におけるLED最大ディスプレー」としてギネス記録を保持
Osaka Metroからのコメント 1)
デザインコンセプトを「大阪の情報を世界に発信する」と捉え、日本最大級のパノラマビジョンが最も活かせるような空間としています。
具体的には、照明器具と可動式ホーム柵のステンレスをアクセントとした白く明るく伸びやかな大空間とし、パノラマビジョンと柱サイネージを合わせた新時代のデジタル広告の大きな舞台として、大阪から世界へ発信する Osaka Metro のフラッグシップ駅にしていきます。
当初計画図
当初コンセプトは「インフォメーション・ターミナル」で、軌道側にも巨大サイネージを設置予定でした。
2019年の計画変更で、ホーム側のみに縮小されています。
淀屋橋
デザインコンセプト:「アーチ構造の象徴」
工事期間:2023年3月~2025年4月11日
Osaka Metroからのコメント 1)
古くから政治・経済の中心地として大阪を支えてきたこのエリアの伝統と格式を、重厚感のある石材やモノトーン基調で表現し、現状のシャンデリアを記憶のモニュメントとして踏襲しつつ、これまでの資産をモダンに再生します。
完成予想図
当初計画図
当初のコンセプトは「歴史」でした。
本町
デザインコンセプト:「インターセクション」
工事期間:2024年夏ごろ~2025年4月11日
Osaka Metroからのコメント 1)
南北の大動脈の御堂筋線と東西へ発展する中央線。大阪を代表する2路線が交わり、万博とその先の未来をつくることをコンセプトに高い機能性と象徴性の調和する駅を目指します。
ダブルアーチの天井形状と柱の造形を活かしながら、高級感のある素材と最新の照明計画により、モダンとクラシックが共存するデザインとしました。
完成予想図
当初計画図
当初のコンセプトは「クロスオーバー・ポイント」でした。
心斎橋
デザインコンセプト:「ジ・オオサカ・ブランド」 “ The OSAKA Brand ”
工事期間:2018年2月~2023年4月
Osaka Metroからのコメント 1)
多くのブランドショップが並ぶ地域との連続性を深め、大阪を代表する高級店の並ぶ現代の心斎橋を象徴する高級感と上質感を感じていただける空間を目指し、そのデザインコンセプトを「ジ・オオサカ・ブランド」としました。
空間全体として開業当時のアーチ構造を活かし、シャンデリアはもとの佇まいを活かしながら最新の LED 技術で復元することで長い歴史を感じていただける空間としています。
駅構内には、随所に麻の葉模様が用いられています。
これは、心斎橋周辺(南船場)が江戸時代に呉服の街として栄えたことから、和柄の中でも代表的な模様である麻の葉柄を採用したとのこと。
当初計画図
出典:3)元のデザイン案は「テキスタイル」。
2019年の計画変更時、最も批判されたのがこの駅でした。まぁ確かにかなり悪趣味ですね…。
完成予想図
計画変更後のイメージ。当初は2021年3月の完成予定でしたが、計画変更の関係もあるのか、工期が2年ずれ込みました。
大国町
デザインコンセプト:「地下構造が美しい駅」
工事期間:2024年2月~2025年4月11日
備考:四つ橋線側のみ
Osaka Metroからのコメント 1)
御堂筋線と四つ橋線の4線が一つの空間で行き交うという Osaka Metro でもここだけにしかない駅であり、それらを支える地下構造の美しさを強調したデザインとしています。列車が走る軌道の天井は、美しさをより際立たせるライティングで魅力的な空間に仕上げます。
南のコンコースには車両模型や車両の歴史に関する展示スペースを設けます。実際に走る車両を展示スペース奥の窓から見ていただける構造とすることで、模型と実際の車両を同じ空間で楽しんでいただける計画としています。
事業としては御堂筋線扱いになっていますが、御堂筋線側ホームは殆ど手が加えられておらず、実質的に四つ橋線ホームのリニューアルとなっています。
南コンコースには、「駅に来ることが目的や楽しみになる、そしてワクワクする駅…」というコンセプトの下、車両を中心としたミュージアムが設置されました。
完成予想図
当初計画図
動物園前
デザインコンセプト:「まるで自然の中にいるかのような空間」
工事期間:2021年1月~2023年6月
Osaka Metroからのコメント 1)
昭和44年に描かれて以降長く親しまれてきた動物タイルを保存・活用し、地下空間でありながらも、まるで自然の中にいるかのようなワクワク感のある楽しくて明るい駅にしました。
既存のタイルに描かれた動物やそこから聞こえてくる動物たちの声、アースカラーの床や壁、木漏れ日のような照明などによって自然の雰囲気を表現しています。
完成予想図

天王寺
デザインコンセプト:「柱の美、格子の美、光の美」
工事期間:~2025年3月31日(照明点灯は4月11日)
Osaka Metroからのコメント 1)
人が行き交い、鉄道が行き交うターミナル駅を象徴する天井のグリッド。その印象的なグリッドと連続する柱の美しさを照明の灯りで際立たせながら、よりクリーンな空間としました。
照明の当て方や素材感で、立体感のある柔らかな空間に仕上げます。
完成予想図
当初計画図
当初のリニューアルコンセプトは「空」でした。
中央線
大阪港
デザインコンセプト:「海」
工事期間:~2025年3月31日(デッキ供用開始は4月11日)
Osaka Metroからのコメント 1)
唯一、海を臨む地上駅としてその臨場感を活かし、エンターテインメント性、観光地としての特性をわかりやすく演出するため、デザインコンセプトを「海」とし、大海原を泳ぐ大型の海洋生物をイメージして駅舎のデザインに活かしました。
ホーム屋根には膜構造の透過性や質感を活かしながら、曲線を効果的に用い、駅空間の魅力を演出します。海を臨むことができる立地条件を活かして、ホーム西側に新たに展望デッキを設けます。
先端にはパラソルやクジラの潮をイメージしたシンボルを設置することで、海をより近くに感じていただけるような展望スペースを計画しています。
ホームの西方(コスモスクエア寄)には、「駅に来ることが目的や楽しみになる、そしてワクワクする駅…」というコンセプトの下、トレインビュースポットが設けられました。
当初計画図
当初のコンセプトは「空中に浮いた旅する船」でした。2019年のブラッシュアップで、やや計画が変更されています。
展望デッキは、バリアフリー対策による階段レス化など以外は、当初と殆ど変わらないデザインとなっています。
弁天町
デザインコンセプト:「ステーション アート」
工事期間:2024年8月~2025年4月10日
Osaka Metroからのコメント 1)
万博や IR をひかえ、当駅で乗り換えされるお客さまの増加に伴い、明るく使いやすい駅としました。また、大型デジタルサイネージを取り入れることで、照明や映像による演出を行い、アートを体感できる空間に駅を昇華させます。
駅壁面には大型のデジタルサイネージが1つのホームあたり7-8面程度埋め込まれ、アーティストによる作品が展示されています。
完成予想図
本町
デザインコンセプト:「インターセクション」
工事期間:~2025年3月25日
Osaka Metroからのコメント 1)
南北の大動脈の御堂筋線と東西へ発展する中央線。大阪を代表する2路線が交わり、万博とその先の未来をつくることをコンセプトに高い機能性と象徴性の調和する駅を目指します。
中央線本町駅も御堂筋線本町駅と同じく高級感のある仕上げ素材と、最新の照明計画を採用します。
なお、御堂筋線と中央線をつなぐ通路や階段などの動線は、万博開催中や会期前後の交通量の変化なども加味しながら、より使いやすい駅となるよう徐々に改装を進めていきます。
完成予想図
堺筋本町
デザインコンセプト:「船場文化」 “ The SEMBA Culture ”
工事期間:2024年7月~2025年3月31日
Osaka Metroからのコメント 1)
船場の文化・交通・物流の交わりを格子で表現しています。手仕事感が残る木調パネルと先進素材でありながら暖かみのあるチタン素材により和風モダンさと匠の交わりを表しています。新たに設置する可動式ホーム柵のステンレスなどの異素材と調和させ、歴史をベースに未来へと飛躍する船場を力強く表しました。
また、学生とコラボした「船場」をイメージした屏風が追加されています。
完成予想図
谷町四丁目
デザインコンセプト:「ジャポネスク」
工事期間:2024年~2025年夏(遅延中)
Osaka Metroからのコメント 1)
歴史的にも精神的にも大阪のシンボルである大阪城。その大阪城に最も近接する駅として、和を柱や壁のグラフィックとして表現し、次世代への新たな美として世界へ発信する駅をテーマとしました。
今回のリニューアルで、唯一工期の遅れがみられるのが谷町四丁目駅です。
2025年夏ごろの完成予定となっています。
完成予想図
森ノ宮
デザインコンセプト:「フォレスト」
工事期間:~2025年4月11日
Osaka Metroからのコメント 1)
市民が憩いくつろげる自然のある大阪城公園に隣接した立地を活かし、柱などの随所に木の枝の表現を取り入れています。家族連れやインバウンドの方々など、すべての人々が集い親しむ、開かれた森のような駅を目指します。
西のコンコースには、今回のリニューアル工事で役目を終える御堂筋線のシャンデリアなどの歴史的価値のあるものを展示するスペースを設けます。大阪城の東部地区では新大学の開校をはじめとしたまちづくりが計画されており、また、国際的な観光拠点である大阪城公園に駅が隣接していることから、 幅広い世代・様々な人々に利用していただき、Osaka Metro の歴史を広く知っていただければと考えています。
駅の西コンコースでは、「駅に来ることが目的や楽しみになる、そしてワクワクする駅…」というコンセプトの下、かつて御堂筋線で展示されていたシャンデリアの展示スペースが設けられました。
当初計画図
計画から施工まで
2018年に計画策定。現在とは竣工予定年度などに違いがあります。
2019年、心斎橋駅などを中心にデザイン面への批判が相次いだことを受けて計画を一部修正。
同年8月に構想を発表後、計画を修正したことで竣工年度もずれ込みました。
当初計画からの変遷
御堂筋線
駅 | 当初コンセプト | 変更後 |
---|---|---|
新大阪 | 近未来の大阪へ ▼ 近未来の大阪 |
近未来の大阪 |
中津 | 梅田の北の玄関口 ▼ プレゼンテーション |
インキュベーター発信源 “ Incubator Central ” |
梅田 | インフォメーション・ターミナル | 大阪から世界へ “ From OSAKA to the World ” |
淀屋橋 | 歴史 | アーチ構造の象徴 |
本町 | クロスオーバー・ポイント | インターセクション |
心斎橋 | おしゃれの発信地 ▼ テキスタイル |
ジ・オオサカ・ブランド “ The OSAKA Brand ” |
大国町 | 列車が一番かっこよく見える駅 | 地下構造が美しい駅 |
動物園前 | – | まるで自然の中にいるかのような空間 |
天王寺 | 空 | 柱の美、格子の美、光の美 |
中央線
駅 | 当初コンセプト | 変更後 |
---|---|---|
大阪港 | 空中に浮いた旅する船 | 海 |
弁天町 | ステーション アート | |
本町 | インターセクション | |
堺筋本町 | 船場文化 “ The SEMBA Culture ” |
|
谷町四丁目 | ジャポネスク | |
森ノ宮 | フォレスト |
年表
2018年12月…計画策定
2019年7月…デザイン担当(CDO)に奥山清行氏を起用
2019年8月…批判を受け、奥山氏監修の下5駅の計画を一部変更
2020年3月…リニューアル第一弾となる中津駅が完成
2020年4月…リニューアル第二弾となる新大阪駅が完成
2022年4月…未着手9駅のリニューアルデザインを正式決定
2025年4月…谷町四丁目を除く14駅の施工が完了
2025年夏…谷町四丁目駅完成予定
関連リンク
参考文献
- Osaka Metro『ワクワクする魅力的な駅へ ~ Osaka Metro 地下空間の大規模改革 ~』,2018年12月20日
- Osaka Metro『安全・安心の追求とワクワクする「地下空間の大規模改革」 9駅のリニューアルデザインが決定しました』,2022年4月7日
- Osaka Metro『駅リニューアル一覧』
- Osaka Metro『地下空間の大規模改革及び夢洲開発への参画について』