大阪市立中央図書館が、異例の声明を発表しています。
というのも予約本が渡せない、返却本が元の位置に戻せない…などなど、図書館としての基本が徹底できず、利用者にかなり迷惑をかけているようなのです。
大阪市立中央図書館において、令和7年4月1日から、窓口等業務委託の受託事業者が交代したことに伴い、予約された図書等をお渡しするまで長期間お待たせしているとともに、返却された図書等を所定の位置に戻せていない状況が続いております。
これらの業務は委託の範囲であり、代わって市職員が当該業務を行うことができないため、図書館といたしましては、受託事業者に対し、遅滞なく業務を行うよう強く指導しております。出典:1)
めっちゃ怒ってますね……
業者選定の経緯
今年4月から図書館の窓口・出納業務を行う事業者が、従来の「図書館流通センター」から「バックスグループ」へと変更されました。
前回の図書館流通センターは、3年間の業務を5億2786万8000円で請け負っていました。
一方で今回契約のあったバックスグループは、入札額が4億2238万5120円となっており、図書館流通センターよりも安値で落札しています。
期間 | 金額 | |
前回(図書館流通センター) | 令和4年4月1日~令和7年3月31日 | 5億2786万8000円 |
今回(バックスグループ) | 令和7年4月1日~令和10年3月31日 | 4億2238万5120円 (図書館流通センターは5億1699万円を提示) |
この理由で令和7年(2025年)4月から、管理業者が変更となりました。
契約に問題は?
ということは、安かったせいで混乱しているのでしょうか?
市側も単にも安ければいいという話ではないのは承知していて、入札公告にあたっては様々な条件をつけているはず。
とはいえ、「ここに問題があるのでは?」とも思い、改めて探ってみたんですが…
(1) ア 一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)が認定するプライバシーマーク制度の認定を受けていること。
イ ISO/IEC27001又はJIS Q 27001の認証を受けていること。(2) 平成26年度以降、年間の資料貸出数370,000点以上の公共図書館において窓口業務を行った元請としての契約履行実績を有すること。ただし、履行中のものは除く(契約期間が複数年に及ぶ実績の場合は現在履行中であっても、1年以上の期間履行されていれば、その契約を実績と認める。)。
出典:4)
…と、図書館業務をこなした実績があることが条件として明記されており、ある程度の線引きはきっちり行っていることがわかります。
ただ、大阪市立中央図書館の年間貸出数は186万点(2023年度実績)で、条件とされている貸出点数とは乖離があります。
素人目ではかなりの差に見えますが、(当サイトは鉄道系サイトということもあって)図書館業務についてはあまり詳しくないので、今回は数字だけを示しておきます。
ちなみに条件にある「37万点」というと、概ね北図書館(36.5万点)と同程度になります。
まだ契約初月度ということもありますが、図書館側からここまで怒りと申し訳なさに溢れた声明を出されるあたり、ちょっと酷そうですね。
契約期間である3年の間で、徐々に改善していくんでしょうか。
まぁ、そもそも図書館管理業務は委託業者に任せるべきではなく、自局内で人材を育てるべきでは?というところではあるのですが…
関連リンク
参考文献
- 大阪市立図書館『中央図書館窓口等委託事業者の交代に伴う業務の停滞について』
- 大阪市 第197回 大阪市入札等監視委員会 『令和4年度 総合評価一般競争入札(各所属発注) 業務委託契約案件リスト(登録種目別掲載)』
- 大阪市電子調達システム『 大阪市立中央図書館窓口等業務委託 長期継続』
- 大阪市「入札説明書」
- 岸本元さんのポスト