近鉄けいはんな線のホームセンサーシステムがわかるまとめ【機器完全解説】

近鉄けいはんな線のホームセンサーシステムがわかるまとめ【機器完全解説】

近鉄けいはんな線内では、ホームドアではなく駅ホームセンサーシステムを2006年から稼働させています。

以前大阪メトロのホームドア解説記事を書いたところそれなりに読んで頂いているので、今回近鉄けいはんな線についても解説記事を書きました。

 

ホームセンサー

ホームセンサーの筐体は1両に1セットづつあり、全部で6セット12筐体(P1~P12)が設置されています。

12筐体のうち、先頭1つ(P1センサー)は列車出発後の監視を、最後尾1つ(P12センサー)は列車が駅へ到着したことの確認を行うセンサーです。

前から2番目のP2センサーに反応があり、P12センサーが無反応になると「列車が駅へ到着した」と判断します。

障害物検知用として、列車と並行に上下4つの赤外線、

および列車在線検知の為に列車側へそれぞれ赤外線が放たれていて、発光・受光が遮られるとその合図を運転士に現示します。

並行に出ている赤外線は前から後ろへとビームが発出されています。すなわち前についているのが発光体、後ろが受光体となっています。

 

センサー反応灯

運転士が確認するのがこの「センサー反応灯」。信号とよく似た装置ですが、下部に白色の光がある点が異なります。

白色点灯時は、列車を検知していることを示しています。

一方で上部2灯の赤色の検知灯は、先ほどのホームセンサーのうち、

・上3本の中の2本が同時に遮断
・もしくは一番下の赤外線が遮断された場合

に、交互に点滅して列車に障害物や人がいることを知らせます。

ちなみにこの赤色灯は、通常の列車停車中における乗降時にも点滅するもので、日常的に観察が可能です。

 

遠巻きに見るとこんな感じ。ぱっと見ではちょっとわかりにくいですね。

近鉄公式YouTubeで語られた運転士さん曰く、「これを過ぎるまでは気が抜けない」のだとか。

 

 

開扉確認印

運転席のドア付近には、このような緑色の四角マークが貼り付けられています。

これは運転士が停止位置を確認するための印で、これが乗務員扉の前にあれば扉を開けていいという目印なのだそうです。

 

列車到着時の流れ

到着~発車までのフローは以下の通り。

①列車到着

列車到着時。最後部にあるP12センサーが遮られると「電車が来た」と判断します。

 

②列車停車

P2センサーが反応しており、かつP12センサーから列車が抜けると、入りきり検知として「電車が到着した」と判断します。

 

③列車停止確認、監視開始

この状態で数秒経過すると「電車が完全に停車した」と判断し、並行に赤外線ビームを出して駅監視が始まります。

先ほどの「センサー反応灯」の白色灯が点灯し、運転士に監視を開始している旨を知らせます。

 

④列車出発

その後P1センサーに反応があると、「列車が出発した」と判断します。

この状態の際に並行のセンサーが何らかの理由で切れた場合、「センサー反応灯」の赤色灯が点滅して異常を知らせます。

 

 

導入のモデル、きっかけ

このセンサーシステムは、けいはんな線登場以前の段階では東急多摩川線や名鉄三河線で既に採用されており、近鉄も参考にしたとのこと。

可動式ホーム柵の導入も視野にあったようですが、

・東大阪線区間においてホームが狭い場所があり、幅が取れないこと
・TASCの整備が必要となりコストが高いこと

を理由として見送られ、ホームセンサーシステムの導入となりました。

 

TASCについては2025年の大阪メトロ夢洲延伸で、全列車への配備が完了しています。

このシステムの導入により、車掌の人件費削減が可能となりました。

 

センサーシステム導入前は長田~生駒間で65名体制で、新石切と生駒に駅長を置いていました。

システム導入後は生駒~学研奈良登美ヶ丘間で3つ駅が増えたにも関わらず、車掌27名を配置転換して省人化を行い、また新石切駅長を廃止して生駒駅長に統合させたことで、総勢55名体制を実現しています

2009年の増発改正後は、1名増えて56名体制となっています

 

 

新石切駅では新タイプが登場

2025年3月21日から、新石切駅では新しく天井に設置するセンサーが登場しました。

上下で発光・受光を行いそうな雰囲気ですが、両者は別のセンサーです。

上が側面のドア監視用センサー、下が列車検知センサーになっています。

列車検知センサーの内側の様子。2つのセンサーで列車の在線検知を担っています。

銘板には「株式会社京三製作所 2023年12月製造 製造番号F33787」との記載がありました。

側面監視センサー。こちらは「DENSO」の文字があります。

元あった転落防止用柵とセンサーの台座はそのまま残されています。

側面からの様子。

 

長田駅は撤去

このホームセンサーは、かつて大阪市交通局との共同管理駅であった長田駅1番線にも設置されていました。

しかし大阪メトロへの民営化後に、全駅へ可動式ホーム柵の設置方針を打ち出したことで、2024年5月に撤去されています。

ホームセンサーとしては初の撤去事例となりました。

 

 

関連リンク

大阪メトロのホームドアが全てわかるまとめを作りました【機器完全解説】

【中央線】長田駅の赤外線式ホームセンサーが撤去される

参考文献

<PDFリンク>

  1. 中川電気工業株式会社『近鉄けいはんな線のホーム監視システムについて
  2. 近鉄技報『けいはんな線の指令所設備について(運行管理システム・電力管理システム・集中監視システム)』 近畿日本鉄道鉄道事業本部企画統括部,2006,
  3. 近畿日本鉄道株式会社『「けいはんな線」ワンマン運転実施についてのお知らせ
  4. 内閣府『東大阪線 概要平面図・縦断面図
  5. 近畿日本鉄道公式YouTubeチャンネル『【“運転目線”展望】けいはんな線・ワンマン運転士に目線カメラをつけて解説してみた【夢洲行き・登美ヶ丘車庫入庫】



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