今里~湯里六丁目・あべの橋間の地下鉄に代わる公共交通機関として、現在BRT(バス・ラピット・トランジット)の導入が検討されています。
この区間は今里筋線の延伸が諮られていましたが、採算性が悪すぎることを理由に断念。その後、代替交通機関が模索されていましたが、2019年度中に。まずはBRTの社会実験路線を設置することを明らかにしました。
今回は、BRTとは何か?や今里筋線代替区間の解説などを交えて、このBRTなるものの概要をご紹介します。
【追記】いまざとライナーの工事がスタートしました。バス停についてはこちらから、車両についてはこちらからどうぞ!
プレスリリース
地下鉄今里筋線延伸部における需要の喚起・創出及び鉄道代替の可能性の検証のためのBRT社会実験について、平成31年度中にBRT社会実験の開始に向け、運行計画(案)を下記のとおり策定しました。
■BRT社会実験の運行計画(案)
〇運行ルートについて
(中略)需要予想結果や地下鉄ネットワークとの接続などを踏まえ、運行ルートは
①今里~杭全~湯里六丁目~長居、②今里~杭全~あべの橋のルートを組み合わせたルートとしました。〇運行頻度について
運行頻度については、地下鉄今里筋線並みの運行頻度(ルート①:3本/時、ルート②:3本/時)を確保することを基本とし、ご利用の少ない平日の早朝・夜間、土休日の運行頻度については、それぞれルート①:2本/時、ルート②:2本/時としました。
〇停留所について
並行路線バスとの競合に配慮しつつ速達性が確保できるよう、中間停留所は地下鉄今里筋線の延伸区間(今里~湯里六丁目)にのみ設定し、その間隔は地下鉄並みの約1㎞間隔とし、既存バス停留所位置を考慮した位置とします。
また、鉄道との乗換結節点となる今里や杭全等については、乗換利便性を考慮した位置とします※並行路線バスの運行ルート及び頻度はBRT社会実験中も維持するものとします。
大阪市BRTのまとめ
・運行頻度は1時間に3本(20分サイクル)。杭全~今里間は6本(10分サイクル)
・早朝、深夜については1時間に2本(30分サイクル)。杭全~今里間は4本(15分サイクル)
・あくまで速達性を重視。バスレーンを導入するかどうかは未定。
・上記の理由のため、中間駅は今里~湯里六丁目のみ。その他は全てノンストップ。
・今里(千日前線・今里筋線)、杭全(JR大和路線)については、乗換やすい場所に駅を設置
・2019年度の試験中、従来のバス路線はそのまま維持。
【追記】・転回のために神路公園とJR長居駅前を追加
BRTとは?
BRTとは、「バス・ラピット・トランジット(Bus Rapid Transit)」の略で、「バスによる高速な交通機関」という意味合いになります。
従来のバスは一般車と同じように走行するので、渋滞の影響や料金支払いによる遅延など、とにかく時間が読めないのが難点です。
しかし、BRTは専用レーンを走行することや、料金支払いをBRT駅で行うことにより、遅延を防ぐ事ができます。
日本では、名古屋のゆとりーとライン、大船渡のJR東日本が運営するBRTがこれにあたります。
また、福岡では西鉄との協力で連節バスが導入され、福岡BRTと銘打って運行を開始していますが、専用レーンがなかったり運賃を車内で徴収するなどで定時制に欠けることから、厳密には完璧なBRTシステムとは言えません。
BRTの定義としては、西日本鉄道と福岡市が発表したプレスリリースに以下の様な記載があります。
「都心循環 BRT(以下 BRT)」とは、連節バスの導入、専用走行空間やわかりやすい停留所整備、
鉄道や路線バスとの乗継強化などにより、従来のバスよりも速く、時間通りに、たくさんの人を運ぶ、
分かりやすく使いやすいシステムを指します。
つまり、西鉄や世界のBRT路線から鑑みると、BRTというのは
・鉄道のような専用通路を持ち
・専用通路があるので普通のバスと違って定時性に優れ
・駅(バス停)で料金を支払うことで遅延を回避できる
・場合によってはガイドウェイシステムや連接バスなども導入
・観光客などにも一目でBRTとわかるような、わかりやすいアイデンティティ
という公共交通システムを指します。
世界の事例
出典:https://www.aimsun.com/belo-horizonte-implementation-of-brt-lanes/
BRTシステムは、ブラジルのクリチバ市が初めて考案したシステムです。
ご覧のように、特徴的なBRT駅に朱色のバスと、誰が見ても「これがBRTである」とわかるようなアイデンティティが特徴です。あわせて、多数の乗客を輸送できるように連節バスが用いられています。
出典:http://thecityfixbrasil.com/2013/01/14/onibus-e-tao-bom-quanto-o-metro/
BRT駅の内部。行先を表示するLED表示機と待ち合いベンチ、曲線を用いた未来的な駅舎デザインなどが特徴的です。
こちらはインドネシア・ジャカルタの例。ご覧のように一般道は車で埋め尽くされているのに対し、BRT道はスムーズに進んでいます。バス停ではなく多数の人が収容できる駅が設置されています。
懸念事項
さて、このBRTを大阪市が導入するにあたり、専用レーンを作るかどうかは一つの懸念事項と言えます。
BRTが経由する今里筋、国道25号線は、今里~杭全・杭全~附属天王寺小学校前までは片側3車線ですが、杭全~湯里六丁目には片側2車線の部分が存在します。
杭全以北である、田島4丁目交差点周辺は片側3車線。これだけ広いと1車線をバス専用レーンにしても、他の一般自動車の走行に支障はなさそうですね
問題は杭全以南。湯里六丁目交差点まで、片側2車線が続きます。 BRT専用道とする場合、1車線がなくなることから、自動車の渋滞が慢性化する懸念があります。
このことから、杭全~湯里六丁目及び附属天王寺小学校前~あべの橋においては、一般道路と共用というシステムになることが考えられます。
予想される駅
今里筋線と同等に1km程度の間隔…とされていることから、おおよその駅を算出してみました。
需要の多少において若干変動すると思われますが、BRTはあくまで速達性を重視するので、それほど多数の駅を設置するとは考えにくいところです。
今里筋線代替区間
今里(確定)~中川二丁目~大池橋~田島四丁目~杭全(確定)~今川二丁目~中野~湯里六丁目(確定)
また、以下の区間についてはノンストップ運行が示唆されています。
阿倍野橋方面区間
杭全~あべの橋
敷津長吉線(9号線)代替区間
湯里六丁目~長居
まとめ
いかがでしたでしょうか。こういった新しい公共交通システムについては、富山LRTの頃から興味を持っています。
地下鉄とも近い存在であることから、引き続き、このBRTシステムについて追いかけて行こうと思います
今里筋BRT「いまざとライナー」関連リンク
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Photo,Writer : Series207 2017/12/21