
Osaka Metro(大阪市高速電気軌道)80系車両は、2006年12月24日より営業運転を開始した今里筋線・長堀鶴見緑地線用の車両です。
<編成表はこちら>
車両概要

原則的には長堀鶴見緑地線70系と同様のスタイルとなっていますが、
・ヘッドライトの丸目化
・ブラックフェイス部の縦方向への延長
・客用座席窓の1枚化
…など、70系をより近代的なスタイルへとマイナーチェンジした格好になっています。

また、70系よりも丸みを帯びさせてやわらかさ・優しさを表現したボディになりました。
将来需要が増加した際、最大6両編成まで対応可能な設計となっています。


70系では側面方向幕にLED式が採用されていましたが、80系ではコスト上の問題で方向幕化しています。(交通電業社製:KS-T0302)

乗降扉についても、70系では窓部分が折れ曲がっていましたが、80系では窓を平板化させることによりコスト削減を図られました。
バブリーな時代に生まれた70系と違い、よりコスト意識を徹底させた車両になっています。

車両前面には「8号線」「大阪市章」、「無限(∞)」、そしてリニア地下鉄を示す「LIM」を組み合わせてイメージ化したロゴが描かれています。

クーラーは、天地方向に余裕のないミニ地下鉄に合わせて195mmのものが採用されています。
これは70系よりも更に薄型化されており、技術の進歩が伺えます。

ヘッドライトは円形のハロゲンランプが用いられており、角形の70系と差別化が図られていました。
しかし2022年9月からLED化され、外観上の違いがなくなりました。

LEDヘッドライトは、4×4で埋め込まれています。上半分がハイビーム、下半分がロービーム用です。

また今里筋線の本線および車庫は全て地下なので、日光による退色を考慮する必要がありませんが、鶴見緑地北車庫や鶴見検車場には塗装装置・保守設備などがないことから、車体塗装は耐久性に優れているウレタン塗装+ウレタンクリア塗装を採用しています、
厳密には鶴見検車場の一部分だけ、日光が間接的に差し込むことはあります。
車内の様子

車内の様子(井高野方 8100号車)。座席はロングシートで、片側に3か所、合計6か所が用意されています。
先述の通り客用窓が一枚化されたことに加え、薄型クーラーの採用で低天井部の高さが2,045mmとなったことから、ミニ地下鉄にありがちな窮屈感が改善されています。

天井部分。クーラー吹き出し口は車両中央2か所へ設置されました。
また、韓国・大邱市で発生した地下鉄火災を受けて国土交通省より「鉄道に関する技術上の基準を定める省令等の解釈基準」の一部改正(2004年12月27日)が施行されました。
これに対応する関係で、耐溶融滴下性を満たす蛍光灯カバーの材料が当時なかったことから、80系では蛍光灯カバーを廃止し、ステンレス製の保護棒が取り付けられています。

先頭側妻面。基本的には70系を踏襲しており、運転時は右側の小窓にカーテンがかけられます。

中間妻面。

座席は1人あたり470mmの幅を設けた5人掛け。従来は幅450mm程度でしたが、日本人の体格向上に伴いやや窮屈になってきたことから、堺筋線66系後期車開発時に検討されたものが本採用となりました。
モケット色はライトグリーン。この柄は2代目のもので、登場当初のものはデザインが少し異なります。

車椅子スペースは、各車両の井高野方に用意されています。(8100号車のみ今里方)
「障害者・高齢者等のための公共交通機関の車両等に関するモデルデザイン」の提唱を踏まえ、
・車椅子スペース横に直径30mmの手すりを設置
・車椅子高さに対応した非常通報装置(交通電業社製)を設置
・出入口横に前後方向 1,200 ㎜以上のスペースを確保
などが行われています。

この部分のみ、座席は2人用となっています。

車内案内装置は横長のLED式(交通電業社製:KS-2084)を採用。各車両の3か所に千鳥配置となっています。
【案内内容】
・行先案内
・次駅案内
・主要駅までの所要時間(蒲生四丁目、太子橋今市、終着駅)
・エレベーター、エスカレーターの図柄案内(上写真)
・啓発表示
【KS-2084/KS-2084A 仕様】
・文字案内部分
方式:3色LED
表示寸法:長さ480mm×幅40mm
文字構成:16ドット40mm角12文字、全角13文字以上は左スクロール
・扉開閉案内部分
方式:LED照明透過文字板式
表示文字
:「こちら側の扉が開きます」 (黄色点灯or赤色点滅)
:「反対側の扉が開きます」 (黄色点灯)
:「扉が閉まります」 (赤色点滅)
・音声案内部分
チャイム:ドア開閉予告チャイム
音声:ドア番号案内他
・電源電圧:DC100V
・制御方式:PSCS(ParaSign Serial Communication System)
・外形寸法
:長さ1190mm×高さ140mm×幅50mm(KS-2084)
:長さ1190mm×高さ143mm×幅56mm(KS-2084A)
・質量:約 6.8kg(KS-2084)/約8.3kg(KS-2084A)

その反対側には扉開閉案内器(交通電業社製:TR-3008)と、ステッカー式の路線図が貼り付けられています。
【TR-3008/TR-3008A 仕様】
・扉開閉案内部分
方式:LED照明透過文字板式
表示文字
:「こちら側の扉が開きます」 (黄色点灯or赤色点滅)
:「反対側の扉が開きます」 (黄色点灯)
:「扉が閉まります」 (赤色点滅)
・音声案内部分
チャイム:ドア開閉予告チャイム
音声:ドア番号案内他
・電源電圧:DC100V
・制御方式:PSCS(ParaSign Serial Communication System)
・外形寸法
:長さ1190mm×高さ140mm×幅50mm (TR-3008)
:長さ1190mm×高さ143mm×幅56mm (TR-3008A)
・質量
約6.2kg (TR-3008)/約7.7kg (TR-3008A)

荷棚と吊り革。吊り革は御堂筋線など他路線とは異なり、横向き(枕木方向)に設置されています。
運転席

80系はTASC(自動で電車が止まる装置)を採用する関係で、当初からワンハンドル型マスコンが設置されました。
マスコン4ステップ、ニュートラル、ブレーキ7段、非常ブレーキとなっています。手動ブレーキは7等分割ですが、大阪市交通局の伝統である「B1」が省略されており、B2~B7となっています。
何故B1が省略されるのかはあまりハッキリとした文献がなく不明ですが、一説には「制動力が弱すぎて使わないから」という説があります。
尚、TASC用のブレーキには31ステップが用意されています。
また、パナソニック製タブレット「タフパッド FZ-M1」が追設され、電子スタフが表示されています。
プロトタイプ(先行試作車)
1.電動モーター式扉

01編成については他の車両とは異なるプロトタイプ(先行試作車)で、わかりやすい差としては扉の構造が異なります。
よく聞くと開閉時の音に差があり、01編成は電動モーター&ベルトドライブ式の駆動装置を試験的に採用。電動ドアのような音が響くのが特徴です。
ドア仕様の違いがわかる動画。この試験結果は、2023年に登場した400系に活かされています。

それに対して02~17編成までの量産車では、従来通りの空気式単動形ベルト駆動方式を採用。
今後の車両製作へ活かすため、両者を併存させて長期使用していくこととなりました。

ちなみに80系は当初、大阪メトロ標準より+10km/h早い、80km/h運転に対応できるよう車両設計を行ったようです。
この話は、2019年発行の鉄道ピクトリアル(57p)にて少しだけ触れられています。
2.転落防止幌の有無


この他、先行試作車は当時まだホームドアがなかった長堀鶴見緑地線への入線にあたって転落防止幌が取り付けられており、ホームドアのある今里筋線への転入時に取り外されました。
現在でも、01編成にはその跡が残っています。
また、先行試作車製造時にはなかった新火災対策基準の施行に伴い、量産車からは防火基準の強化が図られました。
長堀鶴見緑地線への転属

長堀鶴見緑地線の増発、および今里筋線のデータイムにおける減便(7.5→10分間隔)を受けて1編成が余剰となったことから、80系17編成が長堀鶴見緑地線用に改造されることになりました。
2018年8月23日・24日に搬入、2019年3月18日から営業運転をスタートさせました。

施工は川重車両テクノが担当、 平成30年1月11日に8千万円で入札されました。


車体構造や規格は似ているものの、改造内容としてはかなり大掛かりなものとなっています。
・制御装置、空気制動装置の設置
・長堀鶴見緑地線ATO装置の追加
・誘導無線装置の設置
・車体カラーの変更
・車体前部にあった「8」ロゴを外して「Osaka Metro」ロゴを貼り付け
そのせいか、一旦は営業運転デビューさせたものの、その後も2ヶ月ほど試運転を繰り返していました。


方向幕は70系のようなLEDではなく、80系準拠の方向幕のままとなりました。長堀鶴見緑地線としては初の採用ケースです。

現在では70系と共通で運行されています。
主要諸元表

| ←井高野・大正 | 今里・門真南→ | |||
| 形 式 | 8100 | 8200 | 8400 | 8500 |
| 車体構造 | アルミ | |||
| 車 種 | M2c | M1e | M1e | M2c |
| 自 重 | 26.5t | 24.5t | 24.5t | 26.5t |
| 定 員(~7113F) | 88(座席26) | 99(座席34) | 99(座席34) | 88(座席26) |
| 車体長 | 15,200mm(連結器含まず・先頭)、15,000mm(中間) | |||
| 車体幅 | 2,496mm | |||
| 車高 | 3,120mm(先頭)、3,110mm(中間) | |||
| 制御方式 | 回生ブレーキ付 VVVF-IGBTインバータ制御 | |||
| 主電動機(100kW) MB-7005-B |
● | ● | ● | ● |
| 歯車比 | ||||
| 運転台 | ||||
| 営業最高速度 | 70km/h | |||
| 設計最高速度 | 70km/h | |||
| 加速度 | 2.5km/h/s | |||
| 減速度 | 3.5km/h/s(常用最大) 4.5km/h/s(非常時) | |||
| 集電方式/電圧 | ばね上昇空気下降式シングルアーム / 架空電車線式 1,500V | |||
| 集電装置 | PT-7005A | |||
| (設置台車) | ● | ○ | ○ | ● |
| 所属 | 鶴見検車場 | |||