【コラム】長堀鶴見緑地線は「御堂筋線の複々線化」の為に作られた?

【コラム】長堀鶴見緑地線は「御堂筋線の複々線化」の為に作られた?

ミニ地下鉄という規格があります。その名の通り、小型の車両を用いて建設費を安く上げることを目的とした地下鉄の規格です。大阪では長堀鶴見緑地線などが該当します。

ミニ地下鉄の紹介にあたっては、よく「建設費を圧縮するためにトンネル断面が小さくて済むように開発された」と説明されますが、

実はそのルーツは、当時の大阪市交通局長であった「今岡 鶴吉」氏が、超満員だった御堂筋線の混雑緩和の為、「現在の御堂筋線の両脇に小型の地下鉄を建設して複々線化できれば、混雑解消につながる」との発想のもと、考案された規格なのをご存知でしょうか。

 

 

ミニ地下鉄の原点は「御堂筋線の複々線化」

 

 今岡は1962(昭和37)年6月から足かけ6年間大阪市の交通局長をつとめ、将来を展望して大阪市内 の交通基盤を確立した人物である。しかし、古い地下鉄・御堂筋線(旧1号線)は未だに混雑し、今岡は局長在任中から、この改良策を模索している。複々線化すれば良いが、道路下の走行を原則とする地下鉄は不可能である。そこで、道路幅の広い御堂筋道路とほぼ平行に梅田から難波まで通っている道路幅の狭い道路に、トンネル内径の小型の地下鉄なら建設が可能であると考える。ここに思い浮かんだのが、 小型トンネルを走行できる、平板状のリニアモータ を使用し、電車の床を低くすることができるリニアメトロ電車の発想である。(中略)

1975年3月に、御堂筋線の混雑の緩和策として小断面トンネル(内径4m) を走行する低床型電車すなわちリニアメトロ電車の 研究開発がスタートする。

出典:「SUBWAY」 – 日本地下鉄協会報 第207号

 

出典:『土木建築工事画報6(5)』(工事画報社,1930年)

これは、建築時(1930年)の淀屋橋駅の図面です。道路(御堂筋)から見てやや左(東)側に設置されていることがわかります。

これは当時将来の乗客増を予想して、右側(西)に線路を通して御堂筋線を複々線化する為に配慮されているからなのだそうです。

今岡氏はこのスペースに着目し、小型の地下鉄であれば御堂筋線を複々線化することが出来る、という仮説を出したのでしょう。

どういう理由か、結果的に御堂筋線の導入は見送られました。

しかしながら、この開発経験を活かして、1985年頃には当時2度のオイルショックによって1kmあたり300~400億円にまで高騰していた地下鉄の建設コストを抑える目的で、平成2年(1990年)に史上初めてのミニ地下鉄「鶴見緑地線」が完成。(現在は”長堀”鶴見緑地線)

続いて平成18年(2006年)には、全国で初めて同一事業者が持つミニ地下鉄の2路線目として「今里筋線」が完成。現在、大阪市内を縦横無尽に駆け回っています。

 

 

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Photo,Writer : Series207  2017/07/27




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