【コラム】大阪市交通局のサインシステムと賄賂事件(昭和57年)を振り返る

【コラム】大阪市交通局のサインシステムと賄賂事件(昭和57年)を振り返る

記事作成の参考に別件で大阪市会の議事録を読んでいたのですが、ふと気になる文言を見つけました。

 

四方棄五郎委員 今年の5月に発覚した地下鉄の案内標示板の整備事業にかかわる収賄事件、この問題についておたずねしたいと思います。当局としては綱紀粛清という通達も出されて、かなり再発防止に努力をされているようですが、通達の4項目を実施するということで出されておりますので、その内容について、具体的に今実施されている中身についてご説明願いたいと思います。(中略)

中野交通局職員部職員課長 今回の不祥事の内容についてのおたずねでございますが、逮捕、起訴されました4人の職員は、地下鉄の案内標示の整備工事に関連して関係の業者から社会常識を超える金品を収受したという疑いで収賄の罪により起訴されたということでございます。

大阪市 昭和56年度決算特別委員会(公営)昭和57年9・10月 09月29日-04号

 

案内標示板(サインシステム)の工事において、贈賄事件(わいろ)があった…とか。

 

賄賂(わいろ)とは

有利になるようにしてもらう為に渡すお金のこと。袖の下。
わかりやすく言うと「おぬしも悪よのう…」「いえいえ、お代官様ほどでは…」というやり取りのこと

 

詳しく調べてみました。

 

区間は谷町線南部

大阪市交通局の職員が大阪市営地下鉄の路線表示板や行き先案内板などの書き換え工事を請け負っている大阪市内のレタリング会社から、契約や工事の監督などに便宜を図った謝礼として、総額二百万円のわいろを受け取っていたことがわかり、大阪地検特捜部は二十日夜、同交通局職員三人を収賄の疑いで、贈り主の会社社長を贈賄の疑いでそれぞれ逮捕した。(注:昭和)五十五年十一月、大阪市営地下鉄2号線(谷町線)が天王寺駅から八尾南駅(八尾市内)まで十・五㌔延伸され、九駅ふえたのにともなうもので、事件はさらに広がりそうだ。

「市職員ら4人を逮捕 大阪市営地下鉄で汚職」1982年5月21日 朝日新聞朝刊 23面

 

撮影:新御堂筋様

当時の朝日新聞によると、この工事を請け負ったのは東住吉区北田辺二丁目にある「大阪レタリング会社(1970年設立)」という法人だったようです。

谷町線延伸の際、サインシステム看板を取り付ける工事を貰う変わりに交通局幹部にお金を渡していたとのこと。

 

わかりやすく言うとこうなります。

「大阪市交通局のサイン担当様、御礼の200万円でござります」
「大阪レタリング社よ、そちもワルよのぉ」
「いえいえ、大阪市交通局 サイン担当様ほどでは……ぐへへへ…」

 

 

 

ちなみにこういうのって何でバレるのかなと思っていたんですが、この大阪レタリング会社への発注額が急に大きくなりすぎたのがきっかけのようです。

大阪市関係の書類は基本的に全て公開(但しネットのない当時はすごくわかりにくい)されているので、一目瞭然だったようです。そりゃバレるわ…

 

30年の時は流れて…

そんな賄賂を受けたとされる谷町線の当該区間は、天王寺・駒川中野で交換が始まって少しづつですが旧サインが減ってきています。

また、既に(大阪市が100%株式を保有する形ではありますが)民営化されて「賄賂」という概念がなくなっています。




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