大阪メトロの「野良サイン」が急激に減っている理由とは

大阪メトロの「野良サイン」が急激に減っている理由とは

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公営時代にはそこらじゅうにあった野良サイン

実用性としての意義はわかるのですが、正直汚いですし、あまりに貼りすぎて逆にわかりづらいという本末転倒な事になっていました。

野良サインとは?

あらかじめ定められたサイン計画があるにも関わらず、駅員さんなどが勝手に作った貼り紙などで補足してしまうもの。

しかしながら民営化時あたりからだいぶその数も減り、スマートな駅に変化してきています。

このあたりの背後事情はいったい何があったのか、探ってみました。

 

資料と実例

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お客さまの安全確保に係る情報や、施設の使い方・マナー等に関する情報など、提供すべき情報が増え、お客さまが最も必要とする情報がわかりにくくなるケースが生じたり、多様な掲示物や広告と駅案内サイン(紙貼りも含め)が無秩序に氾濫して駅構内の景観を損ね、地下鉄事業のブランドイメージの低下に繋がりかねないといった課題も生じている

出典:「鉄道ピクトリアル 8月号臨時増刊号、特集 大阪市高速電気軌道(Osaka Metro)」、27-28p

この資料は2019年のものですが、根底の考えとしてこの方針があるようです。

民営化前もあったといえばあったのでしょうが、どちらかというと現場裁量の方が強かった、もしくは方針が徹底できていなかったという面の方が強かったのでしょうか。

 

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これは民営化前(2015)/後(2023)で撮影した谷町線天王寺駅の改札部分。

元々あった「谷町線のりば」サインの上から、無理やり野良サインを貼っつけて見づらくなっていました。

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こちらも民営化前/後で撮影した谷町線天王寺駅の改札部分。コントラスト低すぎて何書いてるか見えない…

…まぁ今回取り上げた谷町線天王寺駅は極端ですが、大阪市営地下鉄時代は大なり小なり、こういったユニバーサルデザインのド真逆を平然といくような野良サインがそこら中にありました。

 

野良サインの問題点

サインシステムは、いまや文化・言語・国籍の違い、老若男女といった差異・障害・能力のいずれもを問わず利用出来ることが重要な、ユニバーサルデザインの達成にとても大事なアイコンです。

昨今大阪はインバウンド観光客がひっきりなしに訪れる観光都市となっていますが、何を頼りにするかというとこのサインシステムでしょう。

…そのはずなのに、野良サインはそれら需要を徹底的に無視しているところに問題があります。

またサインシステムは、その鉄道が持つ世界観・ブランドイメージを形成する重要なものでもあります。

それだけに、各社ともデザイン・フォントの選定に手間をかけています。

野良サインはそれら全てをぶち壊すことに他なりません。

 

ただし、先の資料には

バリアフリー設備の設置や駅舎のさまざまな改良により、駅の案内サインに不足が生じては増設を繰り返し(中略)リアルタイムで追加の情報を求められることに対して、補助的に貼り紙を行って凌いでいる(略)

出典:「鉄道ピクトリアル 8月号臨時増刊号、特集 大阪市高速電気軌道(Osaka Metro)」、27-28p

とも書かれているので、実務上必要だから作っている(=必要なところにサインシステムがない)のもまた事実

現業と経営側で意思疎通が出来ていない現れでもあります。

現場が必要だと言ったらすぐに増設出来るような仕組みも必要なのではないでしょうか。

 

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やっつけ感が凄くて見にくすぎる、話題の谷町線天王寺駅の野良サインを見てきました

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