イラスト作成:とさろく様
奉天地下鉄100形車両は、満州国奉天(ほうてん)市で運行される予定であった地下鉄車両です。
結果的には戦争の激化で、未完に終わった幻の存在となっています。
車両概要
大阪市交通局100形とよく似た兄弟ともいえる車両で、図面のみが残されています。
カラーリングについては「明朗な色分けにすること」とだけ指示がありどんな色になっていたのかは不明ですが、大阪市交通局車両と同等の色であった可能性があります。
上のイラストは、図面を基に同じ色合いであったと仮定として、とさろくさんが描いてくださった復元イラストになります。
大阪市交通局の100形とよく似た真ん中の貫通扉に、第三軌条集電ですっきりとした屋根上。
転落防止用の柵がない分すっきりとした顔立ちで、方向看板を車体左側に、反対側には尾灯が取り付けられる予定でした。
車体は全長15.7m、高さ3.4m、幅2.58m、重量34.5tと大阪のものよりはやや小ぶりでした。
奉天の立ち位置
「奉天市」は、首都である新京の2倍以上にもなる人口を持つ、満州国における経済的な大都市でした。
都市高速鉄道の必要性が叫ばれた結果、大阪市交通局の技術調査団が派遣され実際に測量や実地検分をした上で、路線計画・車両計画などが非常に具体的なところまで作られることになります。
南満州鉄道と接続するターミナルの奉天駅は、御堂筋線天王寺駅のような2面3線にする計画であったようです。
駅は東西方向に設置され、ややゆるやかにカーブしていたことが見て取れます。
主要諸元表
形 式 | 100 |
車体構造 | 鋼 |
自 重 | 34.5t |
定 員 | 120(座席46) |
車体長 | 15,700mm |
車体幅 | 2,580mm |
車高 | 3,400mm |
制御方式 | 吊掛駆動方式 |
主電動機(不明) 140kW(2台/両) |
○ |
歯車比 | 不明 |
運転台 | 不明 |
営業最高速度 | 70km/h |
設計最高速度 | 70km/h |
加速度 | 不明 |
減速度 | 不明 |
集電方式/電圧 | 第三軌条集電 |
集電装置 | 第三軌条上面接触式 |
(設置台車) | ○ |
所属 | 鉄西車両工場 |
関連リンク
参考文献・謝辞
大阪市電気局高速鉄道部編『奉天市地下鉄道計画書』
土木建築工事画報「新京地下鉄道の建設に就て」第15巻第10号,1939年10月
『技術的にも新京は良い』大阪朝日新聞 満州版、昭和14年8月13日
イラスト作成:とさろく様