かつて、大阪市営地下鉄の駅にあった大きなディスプレイ。今でいうデジタルサイネージの走りともいえる存在、「モールボード」を覚えておられますでしょうか。
あまり情報がないので、今日はモールボードについてまとめてみようと思います。
花博時に誕生
初めてお目見えしたのは花博が開催されていた1990年(平成2年)4月のこと。
モールボード…直訳すると「もぐらの案内板」となるこの大きな装置は、御堂筋線の新大阪・梅田・難波・天王寺の4駅に登場しました。
種類は
・40インチ プロジェクタ4面マルチモニタ(梅田 ホーム上・新大阪 ホーム上、なんば 南中階)
・33インチ CRTストレート2面/4面モニタ(梅田 1番線ホーム)
・LED表示機(天王寺 現出札口部分)
の3つあり、阿波座にある情報配信センターから各駅へと伝送されていました。尚、冒頭の写真は33インチタイプのものです。
これらは三菱電機が製造を担当し、系列の三菱電機エンジニアリングによって取付・保守がなされていたようです。
番組の内容は…
放映時間は朝7時から夜22時までと長く、登場当初は花博情報を、花博が終わった1990年10月からは以下の情報番組が作られていたそうです。
・DOする
話題の映画や新曲、ストリート情報を独自の画面構成で紹介
・コンピューターグラフィック「1分の絵」
CGの動きで1枚の絵が出来上がるまでの過程を演出
・アメニティ映像番組「LIVEコール」
出演募集したキッズたちが出演するほのぼの番組
・ワンポイントレッスン
通勤途中の車内やホームで簡単にできるストレッチを紹介
全然おもしろくなさそう
これらは半月~1ヶ月ごとに番組の内容が入れ替わり、ニュースやお知らせ・最新映画の紹介などが行われていた模様です。
その後もモールボードは設置駅数を増やしていき、最盛期には13駅17基もの設備がありました。
御堂筋線:新大阪1、梅田4、淀屋橋1、なんば2、天王寺1、なかもず1
谷町線:天満橋1、南森町1、谷町九丁目1、天王寺1
中央線:本町1
堺筋線:堺筋本町1、日本橋1
長堀鶴見緑地線:心斎橋1、長堀橋1
終焉
技術としては非常に斬新なもので、冒頭に書いたように今のデジタルサイネージシステムを先取りしたものと言えるでしょう。
インターネットもまだ実用化されてないこの時代にこれだけのものが実用化出来たのは、驚くべきことです。
…ただ、独自製作ということもあってか肝心の映像部分はあまり面白みがないものでした。
モールボードは、地下構内での動画サインが規制されてしまったために、なくなってしまったんやったな。 https://t.co/T2TGupFhzx
— SAS管理人@大阪メトロ (@sas_subway) August 29, 2016
経年劣化なのかはたまたその他の理由なのかはわかりませんが、2000年に入ってからモールボードはひっそりと姿を消していきました。
SASさんのツイートでは「地下構内での動画サインが規制されたから」という説もあるようです。
時は経て2019年。現代のモールボードともいえる地下駅で世界一のモニタ「Umeda Metro Vision」が稼働しています。
モールボード設置時には、まさかこんなに大きく薄い液晶がつくなんて誰しもが予想出来なかったことでしょう。
流れるコンテンツも当時と違って面白いコンテンツが流れるようになっており、大阪メトロの顔とも言える存在になっています。
関連リンク
参考文献
『鉄道におけるサイバネティクス利用国内シンポジウム論文集』Vol.27th「地下鉄乗客案内情報システム 愛称:モールボード」吉村隆之、後藤道明、冨松則行、1990年11月
大阪市交通局『大阪のあし No.110』
大阪市交通局『大阪のあし No.119』