撮影:新御堂筋様
2024年3月24日~29日にかけて住之江競艇場で行われている「GI太閤賞競走」が、なんと「北急延伸記念」と銘打たれています。
何で「北大阪急行と競艇に関係が!?」とびっくりしたので、少し調べてみました。
競艇の街「箕面」
結論から言えば、北大阪急行延伸の事業費の一部は、競艇で得られた収益から賄っています。
公営ギャンブルから自治体が収益を得て、公的な財源に回す…というのは比較的よく見られるパターンですが、箕面市と競艇の関係は少し特殊な事例となっています。
撮影:新御堂筋様
住之江競艇場で行われるボートレースは、大阪府下16の行政市で構成された「大阪府都市ボートレース企業団」が主催している他、「箕面市」だけは単独で主催しています。
【16の行政市の内訳】
八尾市・堺市・岸和田市・豊中市・東大阪市・池田市・吹田市・泉大津市・高槻市
・貝塚市・守口市・枚方市・茨木市・泉佐野市・富田林市・寝屋川市
単独で主催しているということは、その分得られる収益金も大きくなりますよね。
先の16行政市は収益金を16都市で分けていることになりますから、その歳入額の差は非常に大きいと言えるでしょう。
箕面市が出している、令和3年度における競艇の売上金を見てみると…
売上金 | 人口 | 1人あたり | |
---|---|---|---|
箕面市 | 826億6679万円 | 13.93万人 | 593,444円 |
都市企業団 (16の構成市) |
748億9570万円 | 441.6万人
26.4八尾/49東大阪/82.4堺/18.8岸和田 |
16,960円 |
参考:https://www.city.minoh.lg.jp/kyotei/documents/r4gaiyou.pdf 91p
と、他都市と比較しても人口比で圧倒的な売上金を上げているのがわかります。
箕面市もお墨付き
箕面市も「競艇の売上が好調だったので借金を繰り上げ返済でき、利息も安くなったよ!」というプレスリリースを出しています。
箕面市は、令和6年3月23日(土曜日)に開業する北大阪急行線延伸の整備事業(以下「北急延伸事業」という。)において、ボートレース事業からの追加繰入により、市負担の事業費282億円の財源確保が完了しました。
財源確保の完了により、北急延伸事業のための借入金を全額繰上償還することとし、総額約1.6億円の利子負担を軽減します。
出典:箕面市
競艇から北大阪急行の建設に充てられた収益額は12.7億円で、当初予定していた2050年度での返済完了から、27年前倒しで完済という驚異的な様相を見せています。
繰り上げ返済が出来るということは利息の返済額も減少する為、結果的に6000万円の利息を軽減できています。
苦汁を舐めた過去
では、何故箕面市だけが良い思いをしているのか。これは歴史的な経緯があります。
戦後、日本の競艇事業を立ち上げた「笹川良一」氏という人物がいます。
この方が箕面市出身であることや、当時の箕面市長であった中井武兵衛氏が協力者となり、赤字でも公金で支援したことから、その恩義を忘れず開催権を箕面市・豊川村(現在は箕面市に合併)に指定され、現在まで続いています。
今の箕面市に合併する前の三島郡豊川村出身の競艇の生みの親である笹川良一氏との縁から、豊能郡箕面町と共同で1954年から箕面・豊川競艇組合として初めは狭山池で競艇事業を開始しました。
出典:https://minohkankou.net/about/areainfo/entertainment/
また、この「中井武兵衛」 箕面市長もまた、箕面市の運営に苦心された方でもあります。
昭和40年頃は箕面市の財政は最悪の状態で、当時総務部長であった中井氏は資金繰りに奔走していました。
金融機関へ融資を依頼する際に「お金がいるなら隣の市と合併すればいい」と言われた事に一念発起し、市長時には「健全財政の堅持」「計画行政の推進」をモットーに市政運営を行ってきました。
現在でもその信念は箕面市に引き継がれており、今回のような事態を見せています。
関連リンク
参考文献
箕面市「(報道資料)北大阪急行線延伸事業における市負担の事業費282億円の財源を全額確保 ~ボートレース事業の収益増加により、全額確保の時期が27年短縮~」
全国市長会館「市政 41」『こんな私 / 中井武兵衛』,1992年8月