戦前の御堂筋線を支え、ひっそりと消えていった検車場達

戦前の御堂筋線を支え、ひっそりと消えていった検車場達

ちょっとマニアックですが、今日は戦前に存在した大阪市営地下鉄の車庫について書き留めておこうと思います。

当初の目論見では昭和11年(1936年)に高架線であびこまでの延伸を果たすと同時にあびこ検車場の供用開始を考えていましたが、工期が延びる地下線へと切り替わったり戦争があったりして、結局実現できたのは20年後の昭和30年代(1955年~)でした。

それまでにつなぎの車庫・検車場が必要になるわけですが、暫定的な車庫なので梅田~天王寺間の都心部に大規模な地上用地を確保するわけにもいかず、地下区間に開設された経緯があります。

ひっそりと消え、ネット上にもあまり記述のない戦前の大阪市営地下鉄を支えた検車場を、今日はご紹介します。

 

1.淀屋橋出張所

御堂筋線開業当時の1933年3月に開設された、大阪市営地下鉄最初の検車場。

場所は淀屋橋駅南側、C階段とE階段の間で、ホームがある部分に中線を作っていました。

ここでは定期検査・週期検査・毎日検査が行われました。

1935年に後述する新川出張所が開設されると検査はそちらで行われるようになり、1939年に梅田検車場(現在の梅田駅1番線部分)が開設された際に廃止されました。

 

 

淀屋橋出張所検車場(大阪市地下鉄の歩み,岩村潔 著 より)  当初「梅田検車場」として紹介していましたが、配線から見るに淀屋橋出張所のようです

梅田・心斎橋などの他ドーム駅は5両程度分しかありませんが、淀屋橋駅が10両分まるまる(当時の基準で12両分)ドーム駅であるのはこの為です。

ちなみにこの当時は負担金を沿線からとっていたこともあり、この検車場に近い淀屋橋南側住民から「いつになったら開けてくれるのか(改札を作ってくれるのか)」という要求があったことも移転の背景にあったようです。

 

2.新川出張所

御堂筋線の難波延伸時(1935年10月)に開設された出張所です。1日3両の週期検査のみが行われていました。

延伸によって車両数も増えた(6両→13両へ)ことで淀屋橋だけでは手一杯になったことから開設されました。

新川という名前は、現在の阪神高速1号環状線部分に「新川」という河川があったことに由来します。場所は難波駅の南端です。

1937年に御堂筋線天王寺への延伸に伴い、その機能を梅田出張所へ移転しました。200形09-13号車や300形はここから搬入されています。

ちなみに1936年当時で、既に2両編成3分間隔での運転になっていたようで、御堂筋線がいつの時代も高頻度で運転されるのは変わっていないようです。

 

3.梅田出張所

1937年(昭和12年)4月、梅田駅が本格的に整備されると同時に梅田駅の北側に作られました。

1939年10月に淀屋橋出張所を廃止した後には、この梅田出張所を拡大して後述する梅田検車場として整備されました。

 

4.天王寺出張所

1938年4月に天王寺駅の東側(現在の折り返し線あたり)に開設された出張所。1957年4月に廃止されるまでの長きに渡って使用されました。

名称は1947年に「阿倍野検車場」へ、1950年に「阿倍野検車場天王寺出張所」へ、1954年に「長居検車場天王寺出張所」へと何度か改称されています。

また、西田辺への延伸工事に伴って1952年3~8月の間は昭和町駅に移転していました。

 

5.梅田検車場

現在の御堂筋線1番ホーム部分にあった、出張所ではなく本格的な検車場です。現在でいう御堂筋線梅田駅1番線の中央階段より北側に位置していました。

収容車両数9両、敷地面積2,684㎡、建築面積5.8㎡、周期検査線・定期検査線など3線(A線・B線・C線)がありました。

御堂筋線も天王寺までの延伸を果たし、100~300形までが出揃い更に車両が投入されることが予想されたことから、梅田出張所と統合する形で1939年10月に開設されました。

 

戦時中の車両運用を担当したこともあり、その環境はかなり劣悪なものであったと関係者は述懐しています。

全部裸電球、太陽が当らない関係で、作業服も3日位なおしてたらかびくさくて着れんという位湿気の多いところでございました。夜勤の方は、寝るという場所はありません。食卓をベッドがわりに毛布をかぶって寝るという、そういうような環境で仕事をしておりました。

出典:大阪市交通局鉄道研究部「御堂筋線を駆け抜いた電車たち 100形から1200形まで」 24p、松尾正夫氏の述懐

 

参考文献

石本隆一「大阪の地下鉄」

大阪市交通局鉄道研究部「御堂筋線を駆け抜いた電車たち 100形から1200形まで」

大阪市都市工学情報2次情報集 [論文情報]「車両および検修施設  第3章 車両検修施設,仮設施設時代(淀屋橋検車場から長居検車場まで)




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