大阪市交通局50系車両は、1960年(昭和35年)7月より営業運転を開始した大阪市交通局の車両です。
当時の御堂筋線西田辺~あびこ間の開業時に7両編成へ増備することを目的に製造されました。
尚、製造当初は「5000形」と呼称されており、後継車両である30系の登場と合わせて「50系」と呼ばれるようになりました。
解説
大阪市営地下鉄としては初めてとなるユニットカーとなり、2両1セットの車体構成となりました。
これまでの車両は基本的に1両での運転が可能でしたが、50系では最低2両編成を組まないと運転ができなくなりました。
編成名は5000形-5500形で、5000形に制御装置と集電靴を、5500形に電動発電機・蓄電池を装備しています。
外観は車体や窓、ライト類に至るまで全体的にまるっこく、愛嬌のある顔立ちです。
ドアは戸袋窓付きの3ドア車という点が、どことなく時代を感じさせる機構となっています。
車体はアイボリーとオレンジ色(タキシイエロー)の全塗装が行われており、どこか暖かみを感じる車両でした。
ラインカラーの制定時にホワイト+路線カラーという塗り分けへ変更され、廃車までそのままの状態でした。
後継車両である30系からはシルバー路線へと突き進み、全塗装車両が登場するのは鶴見緑地線の70系まで待たないといけませんでした。
当時の電車は全て鋼で製造されており、塗装をせずに無地で走らせると錆びることから、錆止めの意味合いもあって必ず塗装が行われていました。
大阪市営地下鉄も例外ではなく、初代100形から必ず車体へ塗装が行われていました。
しかし、ステンレスとアルミで電車が作れるようになった30系からは塗装を省略を開始し、以後大阪の地下鉄は無地の銀色電車がスタンダードとなっていきました。
車内インテリア
車内は蛍光灯を採用して非常に明るくなり、これまでの地下鉄車両とは一線を画したものとなりました。
羽目板にアルミデコラ、擦れが発生する乗降ドア・貫通ドアにはステンレス製のものを採用し、腐食になるべく耐えるよう設計されています。
またエアコンはついておらず、走行時の風圧によって送風・排風を行う「ファンデリア」という装置が10個ついています。
(大阪市営地下鉄でエアコンが取り付けられるのは、御堂筋線の10系からです。)
運転台(千日前線車両)の様子。
投入年次
合計で94ユニット・188両が製造され。30系に匹敵する大所帯となっていました。
1次車…5001~5027 27ユニット・54両
昭和35年に製造された50系のトップグループ。先述の通り、御堂筋線西田辺~あびこ開業用に製造されたグループです。
2次車…5028~5041 14ユニット・28両
昭和37年・38年に製造されたグループ。当時飛躍的に伸びていた輸送力増強の為に製造されたグループです。
3次車…5042~5066 25ユニット・50両
昭和38年12月、梅田~新大阪間が開業する際に製造されたグループ。新大阪延伸にあわせて8両編成とするため、1次車に匹敵する25ユニットが製造されました。
この投入グループから戸袋付近に初めて荷棚が取り付けられています。
4次車…5067~5094 28ユニット・56両
最大派閥となったグループ。昭和40年の四つ橋線大国町~西梅田間開業用に製造されました。
このうち5070-5570のユニットは、30系と同等の改造工事を受けてATO試験の車両となりました。
この自動運転技術は、後の鶴見緑地線70系において花開くこととなります。
5085号車は現在も緑木車両工場にて保存されています。
主要諸元表
形 式 | 5000 | 5500 | ||||||||
車体構造 | 鋼 | |||||||||
自 重 | 36.0t | 34.0t(01-12編成) 35.0t(13-94編成) |
||||||||
定 員 | 120 | 120 | ||||||||
車体長 | 17,700mm | |||||||||
車体幅 | 2,890mm | |||||||||
車高 | 3,746mm(01-66編成) 3,735mm(67-94編成) |
|||||||||
制御方式 | 抵抗制御装置 | |||||||||
主電動機(2M) 定格出力90kw(4個/両) |
● | ● | ||||||||
歯車比 | 6.059≒17:103 | |||||||||
運転台 | ツーハンドル(P3、N1)・(ブレーキ段数不明) | |||||||||
営業最高速度 | 70km/h | |||||||||
加速度 | 2.5km/h/s | |||||||||
減速度 | 3.5km/h/s(常用最大) ?km/h/s(非常時) | |||||||||
集電方式/電圧 | 第三軌条集電/直流750V | |||||||||
集電装置 | 第3軌条上面接触式 | |||||||||
(設置台車) | ● | ○ | ||||||||
所属 | 長居検車場 我孫子検車場 大日検車場 緑木検車場 森之宮検車場 |
関連リンク
参考文献
汽車製造「KSK技報. 12(2)」、1963年4月