大阪市交通局は技術的にも土壌的にも、先駆的な試みをよく行っています。
今回は、かつて「大阪市交通局わーるど」さんのコンテンツである、『大阪市交通局の「日本初!」』を、Osaka-Subway.comが再編集したものを公開してみます。
日本初の市営地下鉄の営業運転開始(1933年5月20日)
1933年5月20日、大阪市営地下鉄は梅田-心斎橋間において、日本初の市営地下鉄として開業しました。
開業当時は100型(写真)のみの1両編成でしたが、10両編成分のホームをあらかじめ掘削し、更に開放的なアーチ状の高い天井を誇り、大阪の繁栄を見越して作られたものでした。
現在でもその先人のプレゼントを活かし、10両編成の車両がほぼ手直しなしで軽快に走行し、アーチ部分も(当初と違う使い方ではありますが)、バリアフリー政策における中2階通路空間として活用されていることを考えると、本当に当時の関一(せき・はじめ)市長の先見の明には驚かされますね。
日本初のバスのワンマンカーの運行開始(1951年6月1日)
今では当たり前…というかそれしか知らない人も多い、バスのワンマンカー。それまでは運転手以外に車掌がバスに乗車していました。今では神戸市の観光路線バスぐらいでしょうか?笑
そんなワンマンバスの先陣を切ったのは、なんと大阪市交通局。日本初のバスのワンマンカーの運行は、1951年6月1日にあべの橋~今里間で開始された6台だったそうです。
ちなみに、大阪市営バスの全車両がワンマンカーになるのは、そこから数えて20年後の1971年7月10日のことです。
日本初のバス全車両冷房化(1986年6月25日)
大阪市営バスは、道路の混雑などで乗客離れを招いていました。そんな市バスの利用者を呼び戻そうとして考えられたのが「冷房バス」です。
京王バスなどでは10年前の1976年から採用されていたそうですが、全車両の冷房化を達成したのは京王バス(1991年)よりも早い、1986年6月25日のことでした。
なお、大阪市営地下鉄の全車両冷房化完了は1995年・夏のことなので、地下鉄よりもバスの方が早かったことになります。
日本初のGTOサイリスタを採用したVVVFインバータ制御電車の運転(1984年12月24日)
これは比較的有名な話ですが、現在の高速鉄道におけるVVVF化のパイオニアといっても良い存在、それが中央線で活躍する20系です。
高速営業車両としては初登場(低速営業車両=路面電車も含めると熊本市電が初)でした。
1984年12月24日から営業運転を開始した20系は、「電車100年の歴史を変える交流モーターの電車(大阪のあし・No.92)」として、鉄道業界では注目を集めた車両でした。
これまでの抵抗制御車では、電気エネルギーを抵抗器で調整して制御しており、抵抗は放熱することからトンネル内の温度が上昇していました。その対策として10系チョッパ車が登場するのですが、その後に本格的なVVVF車両として登場したのがこの20系です。
※当初「営業運転」と書いていましたが、落成・運転は確かに20系車両が先なものの、実際に営業運転を開始した車両は他社の車両の方が早かったそうです。ここにて訂正させて頂きます。
日本初のリニアモータカーの営業運転(1990年3月20日)
1990年3月20日、鶴見緑地で行われた「花博」への輸送手段として開業した鶴見緑地線に登場した70系は、日本初のリニアモータカーを実用化した車両でした。
線路の間に敷設されている板状のリニアを、車両に搭載しているリニアモーターを使って上手に作用させて急勾配もなんなく走ることが出来る車両でした。
更にリニアを採用したことによって大型の走行機器が要らなくなることから、車両の低床化、ひいてはそれに伴うトンネルの断面を小さくできることが最大のメリットです。
現在新たに開業している東京・大江戸線、仙台・東西線は、全てこの大阪市営地下鉄鶴見緑地線スタイルが元祖となっています。
日本初のリフト付路線バスの運行開始(1991年11月14日)
今ではノンステップバスが当たり前ですが、今から20年ほど前の路線バス事情では、乗降口のステップ(道路面から約84cmの高さ)が壁となり、車椅子の方がスムーズに乗ることができませんでした。
そんな中1991年11月14日に登場した、バリアフリーの先陣を切ったこの「リフト付バス」では、運転席横に運転手のボタン装置で操作できるリフトを、道路面から車内に上下させることが出来る装置を搭載した、スグレモノなバスでした。
現在のノンステップバスが手動でリフトを上げ下げしていることを考えると、この時代に出たバスの方がハイテクだったのですねぇ。
このリフト付バスは、1991年11月14日に、1両がまずあべの橋~天満橋間(5.4km)で運行を開始、翌年1月13日には11両が増備され、1995年12月25日には55両・19路線で運行、最盛期には69両ものリフトバスが配備されていたのだそうです。
しかし1997~1998年頃にノンステップバスが登場し、またそれに伴ってメーカーの生産が停止したこともあって、2003年頃から廃車が始まり、2010年には全てのリフトバスがその役目を終えました。
参考リンク
「No.30 市バス新車リポート 2010(10.10.20掲載)」 – Hima-Sta Plus
まとめ
いかがでしたでしょうか。
大阪市交通局は常に最先端技術や、さまざまな”日本初”を行っている交通事業者。現在は少し元気がありませんが、いずれまたこういった最新のものに挑戦していく風土が出来上がっていくのでしょうか。
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Photo,Writer:Series207 2015/7/15