今から90年前の1933年(昭和8年)5月20日。
この日は、大阪初の地下鉄である御堂筋線梅田(仮停留所)~心斎橋間が開業した歴史的な記念日です。
先見性のある12両対応のホーム
昭和8年、大阪初の地下鉄である「梅田仮停留所~心斎橋間」が開業しました。
当時の梅田駅は軟弱地盤であったことに加えて駅構造が壮大で、昭和8年に建設が間に合わず、昭和10年まで暫定的に仮停留所で開業しました。
こちらは開業当時の心斎橋駅。
こちらが梅田仮停留所。
このホーム跡は現在でも残っており、梅田駅~淀屋橋駅間で壁をじっと見ていると見ることが出来ます。
駅にはモダンな白熱灯が用いられていましたが、現在使われているLEDや蛍光灯よりも遥かに照度が少なく、薄暗い駅であったようです。
【参考】当時の駅構内はかなり暗く、以下の駅でこのようなデータが残っています。
尚、ここでの「梅田」は現在も供用されている本駅で、今回紹介した仮駅とは異なるものです。
本駅でもこの暗さですから、仮駅は更に暗かったものと推測されます。
駅名 | ホームの明るさ | 改札部の明るさ |
---|---|---|
梅田 | 24lx | 43lx(北改札)、南改札 38lx |
淀屋橋 | 22lx | 32lx |
本町 | 30lx | 55lx |
心斎橋 | 39lx | 北改札 41lx、南改札 61lx |
難波 | 36lx | 北改札、南改札 61lx |
大国町 | 32lx | 46lx |
動物案前 | 33lx | 45lx |
天王寺 | 27lx | 35lx |
当初から「大大阪」の発展を見越し、運行車両は1両であったのにも関わらず、将来対応を考えた17m級車両で12両編成の車両が止まれるような駅構造でした。
後に過剰投資が過ぎるとして大国町以南は8両編成対応に縮小されますが、結局現在は18m級の10両編成の車両が行き交いしており、実に先見の明があったといえます。
出典:http://www.city.osaka.lg.jp/somu/page/0000106885.html(リンク切れ)
牛・人・車に引かれて御堂筋をゆく100型
出典:『大阪市電気局四十年史. 運輸篇』(1943)
平野町3丁目に作られた搬入口。
この牛や人に引かれて大阪の街を行く有名な写真は、梅田貨物駅から搬入口であった平野町3丁目まで100型を牽引する風景です。
所要時間はなんと4時間もかかったのだそうです。まさに牛歩の歩みですね。
御堂筋の夜景。アーク灯と地下鉄出口が等間隔に並べられて美しいですね。
当時の大阪市が持つ先見性・技術力・土木技術は、それぞれ大日本帝国の最先端であり、「大大阪」と呼ばれた華々しい時代でした。
その数々の遺跡は、80年経った今の大阪市営地下鉄の随所、特に数々の隧道(トンネル)に垣間見ることが出来ます。
あくまで「地下鉄」を断行した関市長
地下鉄建設にあたっては、「こんな地盤の悪いところに地下鉄を造るなどもってのほかで、工事の比較的容易な高架線路にすべき。」との意見が多く、
あの阪急電鉄創業者である小林一三ですら「地震大国日本に地下鉄など作ったら關さんの名に傷がつく」と反対しています。
しかし、地下鉄建設を貫いた関市長はこう述懐しています。
「地下鉄のほうが地震に強い。それに都市空間を有効利用するためには地下のほうがいい。最初にお金はかかるが、長期的に見れば安くなる。それに地下なら空襲の被害も避けられるし避難場所にもなるではないか―」
出典:「 ~ 100年の計で大阪の都市基盤を築く ~「關 一」編」『SUBWAY 第210号』一般社団法人 日本地下鉄協会,2016年8月
それでも尚、将来の大阪の為にと地下鉄建設を断行した、関 大阪市長(初代)と清水凞 建設部長の先見性に、私達は敬意を示すと共に、 これからも大切に使っていかなければいけませんね。
梅田仮停留場のことなら
出典:『大阪市地下鉄建設70年のあゆみ』(大阪市交通局,2003年9月)
記事中に出てきた「梅田仮停留場」のことについては、書籍「マルコに恋して」にて、より詳細な梅田仮停留場の図面を、歴史上初めてご紹介しています。
是非、この機会にお買い求めください…!
施工担当会社
梅田~心斎橋
太郎町~周防町工区(本町南部~心斎橋駅):飛鳥組
本町~大江橋北工区(淀屋橋南部)、梅田北半部鉄道省委託工区:大林組
梅田仮駅北部~大江橋工区:大倉土木
梅田中央工区~梅田南半部工区:清水組
心斎橋~天王寺
周防町~九郎右衛門町工区(心斎橋南部~難波北部):飛鳥組
難波・元町三丁目・元町車両搬入口工区:大林組
敷津潜函工区:白石基礎
大国町工区:大倉土木
関西本線北~山王町工区:間組
山王町~阿倍野筋工区:清水組
天王寺:大林組
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Writter:Series207 2018/05/20