大阪市営地下鉄・大阪市バス・大阪メトロと関係が深かった、交通電業社という企業をご存知でしょうか。
同社は方向幕を筆頭に、自動放送装置やバスの方向幕に至るまで様々な表示機を製造するメーカーです。神奈川中央交通や京阪電鉄への納入実績もあります。
そんな交通電業社に動きがあったようで、「ビアードパパ」の買収、売り抜けに成功した投資ファンド「アント・キャピタル・パートナーズ」が同社の株式を譲渡された（買収した）…というリリースがありました。
アント・キャピタル・パートナーズ株式会社（以下「弊社」）が運営するアント・ブリッ
ジ 5 号 A 投資事業有限責任組合は、2020 年 1 月 31 日付けで株式会社交通電業社（以下「交
通電業社」）の全株式を旧株主より譲り受けましたのでお知らせいたします。出典：アント・キャピタル・パートナーズ株式会社「株式会社交通電業社の株式譲受について」
またその情報と前後して、2月27日の官報「決算公告」によると、以下の企業を吸収合併したとのこと。
・有限会社パラサイン
・KD株式会社（法人番号：4010001206442）
どこかに売却される？
「パラサイン」というのは同社のブランド名ですが、法人名としても存在していたことに驚きでした。
元々別会社として運営していた「有限会社パラサイン」と、（本社が同一の場所なので恐らく）ファンドの関連会社である「KD株式会社」を吸収合併、KD株式会社からの送り込みという形で投資ファンド側が役員ポストについたと考えられます。
アント・キャピタル・パートナーズは、過去に「ビアードパパ」で著名な「麦の穂ホールディングス」を2006年8月に買収した後、企業価値を高めて2013年11月に永谷園へ売却した実績があります。麦の穂ホールディングスは現在永谷園の完全子会社となっています。
同じ流れが交通電業社に起こるとすれば……、何年か後に別の会社に売却される可能性があります。
交通電業社ってどんな会社？
交通電業社の製品
交通電業社は、大阪市営地下鉄・大阪メトロと何かと縁のある会社で、駅や電車内では至るところに製造品を見ることが出来ます。
設立当初はバス用の方向幕巻取り機の製造からはじまり、1970年代より他社に先駆けてコンピュータ技術を導入。一挙に自社開発を拡大させ、長年鉄道業界へ貢献してきました。
30000系においては、前面行先表示器（KS-L7800）や側面行先表示器（KS-L7710）、
及び車内ディスプレイ表示装置（TR-4001・谷町線のみ）などを担当。
この他、見えないところでも「非常通報送受話器」「扉開閉予告灯」など、多くの電装品を担当しています。
また大阪メトロ車両ではこの他、66系や80系の行き先表示器、70系リニューアル車の車内案内表示機、10系や新20系のLED車内表示機など、非常に多くの伝送機器を製造しています。
京阪電鉄では車外LED行先表示器と車内LCD案内表示器・ドアチャイム・誘導鈴・扉開閉予告灯を一つのトータルパッケージとして製作、13000系に採用されています。
交通電業社の歴史
交通電業社は昭和24年に大阪市阿倍野区昭和町にて創業。現在の本社は大阪市平野区に位置しています。
これまで本社は西成区にありました（現在も本店が位置しています）が、2017年に移転しています。
2018年には工場向かいに新館(ANNEX)を竣工。おそらくこちらが本社として機能しているものと思われます。
2020年に東京事務所を開設するなど、全国区へ足がかりを広げようとしています（というか、神奈川中央交通に販路を持つ割に関東方面でオフィスがなかったのが意外でした）
代表取締役交代へ
やはりこの流れが来ましたね。
2020年4月30日、代表取締役社長の菰口伸二氏が顧問に退き、新しく相薗岳生（あいぞの・たけいき）氏が代表取締役社長に就いたとリリースがありました。
この度、代表取締役の菰口伸二が退任し、2020年4月27日付で相薗岳生が新しい代表取締役に就任致しましたことをお知らせ申し上げます。
また退任した菰口伸二は、当社の顧問に就任致しましたことを併せてお知らせ申し上げます。
2020年2月に、一般社団法人日本パワーエレクトロニクス協会の理事長、パワーエレクトロニクス人材開発株式会社の代表取締役社長、Mywayプラス株式会社の取締役を辞任しました。
— 相薗 岳生 (@takeiki_aizono) April 25, 2020
相薗岳生氏は、一般社団法人「日本パワーエレクトロニクス協会」の理事長、パワーエレクトロニクス人材開発株式会社の代表取締役社長、Mywayプラス株式会社の取締役などを歴任していた方のようです。
また、菰口伸二氏は2010年に代表取締役に就任。10年に渡って代表取締役を努めてこられました。
