大阪地下鉄の「床タイル」がわかるまとめを作りました【設備完全解説】

大阪地下鉄の「床タイル」がわかるまとめを作りました【設備完全解説】

地味な存在ですが、地下鉄といえば必ずあるのが床材・床タイルですよね。ジャンルでいうと仕上げ・装飾工事の類になります。

鉄道趣味とはジャンルが遠いこともあってあまり取り上げられませんが、これも地下鉄を構成する大事な要素。

ということで、今日は大阪市営地下鉄・大阪メトロで用いられている床タイルについてざっくりとご紹介していきます。

 

 

床タイル200 角山型溝入り

一辺が200mmの山型に溝が入った磁器タイル。駅ホーム床によく用いられるもので、昭和20年以前から採用されている歴史あるものです。

大阪窯業耐火煉瓦株式会社(現:ヨータイ)が製造していた舗装用ブロックを参考にして作られました。

滑らないように安全性・耐久性を考えた結果、このようなデザインになっています。

 

戦時中や戦後期の資材不足の際には、やむなく砕石入りモルタルなども使用されたそうです。

ちょうどこの時期に開業した花園町や西田辺などにあるかと思われましたが、見つけることが出来なかったので取り替えられたものと思われます。

 

床タイル152角溝入り

一辺が152mmの角厚15mm・溝入の磁器タイルです。

これは昭和40年代の地下鉄建設ラッシュの影響で、先述した200mmタイルの製造が間に合わなくなり急遽採用されたタイプ。

市松模様にしているのは、同一方向にすると視界がぐるぐるしてよろめくからなのだそうです。

後述するテラゾーブロックへの切替で数を減らしているものの、2023年現在でも本町駅連絡通路などで見ることが出来ます。

 

 

100mm角厚8mmコーナーR

上述の200・152のタイルは耐久性・摩耗性に優れていたことから、長らく床材のスタンダードとして採用されてきました。

しかし、

・よほど乗客がひしめき合うような場所でもなければオーバースペックであったこと
・ハイヒールを履く女性が増えたことで躓きやすいという苦情があったこと

から、それらに対応して1972年の北加賀屋・住之江公園駅開業時から採用されたのがこの100mmのフラットなタイルです。

価格も安価なので1970~80年代の末端駅などではこのタイプが採用されるようになっています。

 

 

テラゾーブロック

人造大理石で作られたブロックのこと。1968年の谷町線天王寺駅開業時に初めて採用されました。

大理石を用いつつもセメントが配合されて安価になっており、仕上程度も当時の基準でA級とされるなど評価が高いものでした。

一旦は上述の100mmタイルが採用されましたが、側面の壁デザインと調和を図る観点から1980年の天王寺~八尾南延伸時には再びこちらに戻されています。

 

 

人工大理石

人”造”大理石と異なり、こちらはアクリルやポリエステルを主成分として作られたブロック。

テラゾーブロックと異なりマーブル状の柄目がなく、スマートなデザインに仕上げられるのが特徴です。

心斎橋駅のリニューアル時など、近年床材の張替えが行われている駅ではこちらが用いられています。

 

ゴムブロック(ホーム先端)

昭和30年後半から現在に至るまで、ホーム先端部で用いられるもの。

開業当初はホーム先端部でも「床タイル200 角山型溝入り」+「白線タイル」が用いられていましたが、国鉄が採用したゴム入りノンスリップタイルが優れていることに着目した結果、大阪市交通局でも採用されることとなりました。

寸法は300mm x 450mm x 30mm。ゴムが7条入ったモルタル入りブロックです。

尚、昭和30年(1955年)以前に開業した駅でも、昭和55年(1980年)までには全てこのタイプに取り替えられています。

 

 

テラゾーブロック(階段部)

駅コンコースに続いて階段部でも用いられるのが、300mm角厚30mmのテラゾーブロック。

滑り防止の為にドット柄のゴムが25個入ったブロックで、階段先端部では僅かに段差のついたステンレスコーナーが設けられています。

地上部から地下鉄に入って最初に目にするのがこのドット柄タイルですよね。

地下鉄といえばお馴染みのタイルではないでしょうか。

 

 

総評

というわけで、ちょっぴりマニアックな床タイルの紹介記事。いかがでしたでしょうか。

大阪メトロの歴史は深いものの、意外と床タイルについては変遷が少なく、開業時のものが現在でも使用されていることに私自身も調べていて驚いた次第です。

駅員さんの前で床にカメラを向けて「こいつは何をしてんのや…?」みたいな顔で見られたりもしましたが、皆さんのお役に立てたのであればそれもまた報われます(駅員さんすみません)

しばらくマニアックな完全解説シリーズが続きますが、お付き合い頂けると幸いです。

 

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参考文献

『都市問題研究 第43巻 第9号(通巻489号)』「地下鉄駅の環境改善と乗客サービス」ー 多田英司、1991年9月

大阪市交通局「大阪市地下鉄建設五十年史」pp.599-601

 

 




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