【コラム】変わり続けた10A系、まもなくラストラン

【コラム】変わり続けた10A系、まもなくラストラン

早いもので、10系・10A系グループは残すところあと1本のみとなりました。

最後まで残ったのは、10系グループの末っ子である10-26編成(1126F)です。

物心ついた時から御堂筋線といえば10系だったのですが、最近フォロワーであるWEsunny8080さんに言われた言葉でハッとした言葉がありました。

気がつけば2編成にまで減っていた10A系。目まぐるしく価値観の変わる大都会で、常に時代に適合しようと努力を重ねてきた電車。「変わり続ける者だけが変わらずにいられる」を身をもって示した電車。あとちょっと。大阪の大動脈として命を注ぐ。

出典:https://twitter.com/WEsunny8080/status/1528036377027579905

 

そうだ、10系というのは常に自分を時代と合わせて変えてきた電車なのだと…改めて気付かされました。

そんな10系の偉大さを称え、今日は彼が「変えてきたもの」「変わり続けてきたもの」を振り返ろうと思います。

 

1:冷房事情を変えた

まず変えたのは「地下鉄の冷房化」。

当時は薄型の冷房装置がなかったことや、抵抗制御車両が多い中で排熱処理問題が解決できず、地下鉄での冷房装置はずっと見送られ続けてきました。

阪急電車から乗り入れてくる堺筋線でも、天神橋筋六丁目駅で冷房が切られてしまうという事態がザラにあったそうです。

電気に抵抗器を用いて調整する「抵抗制御」は構造が簡単で、電車開発以来長らく採用され続けた「枯れた技術」でしたが、エネルギーを熱として捨てるのでトンネルの熱量が上がってしまう問題がありました。
地上の鉄道では問題になりませんが、地下では熱がトンネル内に吸着してしまい、結果として地下全体の気温が上がってしまっていました。

8月の淀屋橋駅での気温を見ると、昭和8年の開業当初では25度でしたが、昭和35年には31度まで上昇
電車だけで一杯一杯なのに、クーラーを付けて排熱すれば更に上昇を招くこと必至でした。

 

大阪市交通局側としても日々高まる冷房需要のニーズをどうにかクリア出来ないかと頭を悩ませ、しまいには「トンネル内に川を作る」なんていう案が至って真面目に考えられたこともありました。

カビがひどく、難波駅で実験されたに留まりました

 

そんな中で10系は、最新鋭のチョッパ制御や薄型冷房装置の開発(次項で解説)を兼ね備えて排熱問題を解決。

冷房装置の排熱枠に振り分け、地下鉄を「涼しく変えた」存在でした。

 

 

2:構造を変えた

10系は同じように見えて、実は1度マイナーチェンジを行い車体形状を変えています。

1101~1116F(10系01編成~16編成)までと1117~1126F(10系17編成~26編成)では構造上に大きな違いがあるのです。

10系16編成まで(1次量産車)

前期タイプである1101~1116Fは、台枠や構体に大型形材を使用。

その見た目は、どちらかというと新30系(谷町線で活躍していたタイプ)に近いものです。

エアコンの高さは40.5cm。現代の基準としては厚みがありますが、当時としては薄型のものが採用されていました。

御堂筋線の地下トンネルは「レールの面上から高さ375cmまで」という厳しい成約があり、これをクリアすべく開発されたのがこのエアコンでした。

当時はそれでも高さが足りず、苦肉の策として車両側の高さを落として対応したのです。

このことから、エアコンのある部分だけ車内の高さが低く、圧迫感のあるものになっていました。

 

10系17編成以降(2次量産車)

一方、後期タイプの1117~1126F(と9連化の増結用車両1900形)では、20系で採用された薄型の大型中空形材をフィードバックしたアルミ車両となり、すっきりとした外観になりました。

窓まわりの取り付け用幅代についても差異が見られます。

冷房装置についても30cmの超薄型化のものが採用され、あわせて天井スペースを10cm高く出来、圧迫感がやや和らぐなど、地味ながらも変わり続けたのです。

 

3:デザインを変えた

時は1998年。製造から20年が経過した10系も、中間更新が行われるようになりました。

大阪市営地下鉄では中間更新でもデザインが変わることはなかったのですが、10系は思い切って前面部分を黒のFRPで覆い、さらっと垢抜けた車両となりました。

先輩である30系、後輩の20系や新20系を見ても、ここまでデザインを変えた車両はありません。

 

大阪の代表である御堂筋線を走るからには、見た目もおしゃれでいなくちゃいけない…」なんて中の人が思ったのかどうかは知りませんが、

ここまでデザインを変えたおかげで、グッと近代的な車両になったのです。

 

4:制御装置を変えた

最後は制御装置。

チョッパ制御を用いた10系は「省エネ電車」としてもてはやされましたが、制御機の故障や部品の供給不足などを理由にVVVF化を決定。

先程の2次量産車(10系17~26編成)に、VVVFインバータ制御へと載せ替える大掛かりな施工を受けることになりました。制御装置を変えたのは、大阪市営地下鉄でも唯一となります。

まぁ変えたというよりも「変えざるを得なかった」というのが真相のようで、先程書いたチョッパ装置部品の枯渇(大容量の逆導通サイリスタ)が背景にあるようです。

上記のVVVF化や廃車などによって逆導通サイリスタ部品を確保し、10系チョッパ車両最後の10系13編成が2020年まで走りきったのでした。

 

総評

以上のように、時代に合わせて変え続けた、変わり続けた10系。

このように色々なものを変え続けた10系ではありますが、ただ唯一所属路線だけは一切変わらず、生まれてから最後まで御堂筋線のフランチャイズプレイヤーでありました。

初代01編成が「20系」として竣工したのが1973年ですから、そこから数えると49年に渡って大阪を、そして御堂筋線を支え続けてきたことになります。

 

そんな名車、10A系の引退もまもなく。

現在(6月11日)のところ何も発表はありませんが、コロナウィルスの影響やファンのマナー悪化などの時代背景から、ラストランはサイレント引退となってしまうかもしれません。

しかしそれでも、大阪メトロファンのである私は最後まで追い続けようと思います。

 

関連リンク

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参考文献




書いた本



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