南海8300系・泉北9300系がグッドデザイン賞を受賞したことは、グループサイトの「鉄道プレス」にてお伝えしましたね。
個人的にこれ結構なインパクトで、あれからずっとグッドデザイン賞について調べていました。
そんな中、ふとした疑問が頭によぎります。それは
初めてグッドデザイン賞を受賞した電車って何系なんだろう…?
というもの。
この話を調査した結果、意外な車両が受賞していることに気づきました。それは……
そう、答えは近鉄7000系でした。まさかの大阪~奈良の電車が初受賞とは…
革新的だった新しい「近鉄電車」
当時開業準備をしていた、大阪と奈良を結ぶ新しい鉄道となる「近鉄東大阪線」(現在のけいはんな線)
路線規格や集電方式まで、何もかも新しい近鉄久しぶりの新線向け車両にふさわしい「未来志向電車」として、なめらかな曲線を採り入れ、左右非対称な顔つきとなりました。
車体色も明るいパールホワイトをベースに、生駒から登る太陽をイメージしたソーラーオレンジ、大阪港の海を表すアクアブルーとするなど、これまでの近鉄電車とは全く違う斬新なデザインで設計されました。
前の運転席には大型の曲面ガラスを用いて丸っこい優しいデザインに。
冷房装置も薄型のものを採用してでっぱりを少なくして、全体的に流麗でスマートな印象のデザインとなっています。
横には当時最新鋭(7000系と同年代)で大阪市交通局20系も並んでいますが、未来的なデザインといわれた彼よりも7000系は更に先をいくデザインです。グッドデザイン賞も納得ですね。
ちなみに現在の姿は2004年頃に行われた更新工事後の姿で、原型は行き先が方向幕、車番も丸っこいフォントとなど一部で違いがありました。
検査の際には、写真のように機関車「モト」に引っ張られ、東大阪線よりも幅が狭い近鉄他線を走行います。
その為に、他線と幅と合わせて通れるように裾部分も絞られていますが、これも結果的には「丸み」を表現するデザインの一つとなっています。
7000系のデザインがいかにデカいインパクトだったのかは、当時の大学教授が辛辣な言葉と共に振り返ることで伺えます。
グッドデザインマークを授与された近鉄7000系の車両のように(筆者はその時の審査委員の一人であった。)外装に透明な明るい色を持った車両が多くなった(中略)
これまでの鉄道車両の多くは、わずかな例を除いて、産業の衰退を表現するかのように、見る人の心を暗くするようなくすんだ寒色系で、仕上がりの感心しない塗装をされるのが殆んどであった。
観の造形にしても、同じ車両の仲間である日本の自動車のデザインが、パリの街中で、思わず振り返った素晴らしいデザインの車が日本車であったりするほど、世界の一流レベルにあるのに、鉄道車両ときたら、わずかな例外を除くと、わざと醜くデザインされたのかと皮肉の一つも言いたくなるほどであった。出典:運転協会誌 29(11)(341)「運転協会誌 29」(11)(341)、『明日に向かって立ち上がる車両技術』、井口雅一、1987年11月
全車在籍中
鉄道車両へグッドデザイン賞が授与されていくきっかけとなった7000系。まさかこんな近くに立役者がいるとは思いもしませんでした。
現在同年代の20系が廃止となりつつありますが、7000系は全車が在籍しています。
後継である7020系も同じ顔つきで登場し、けいはんな線は現在7000系9本、7020系4本の13本体制で運行しています。
関連リンク
参考文献
近鉄技術研究所「近畿日本鉄道技術研究所技報 16」『東大阪線の電気設備・新造車両の紹介』東大阪生駒電鉄 K.K、1985年3月