大阪市交通局・大阪市高速電気軌道30000系車両は、2009年3月18日より営業運転を開始した御堂筋線・谷町線用の新型車両です。
従来使用されてきた谷町線新30系、及び御堂筋線10系の代替車両として登場しました。
御堂筋線への新造投入は21系18編成13年以来ぶり、谷町線への新造投入も22系19編成以来13年ぶりとなります。
<編成表はこちら>
コンセプト
・大阪市の地下鉄車両として長年培ってきた安全設計を継承すること
・新時代の地下鉄車両としての快適性を追求した車両とすること
・バリアフリー化を更に進めた人に優しい車両とすること
・国際集客都市にふさわしく、外国人にも利用しやすいように、案内などに配慮を行うこと。
・最新の火災対策に準拠した、より火災に強い車両であること
・最近の重大鉄道事故の教訓を生かした安全設計とし、万一事故等が起こった場合でも被害を拡大しないように、設備や構造に配慮した車両であること
・保守性の良い車両とすること
・サービスを維持して、かつコストダウンを図った車両とすること
出典:山崎康二『30000系車両の概要』 (大阪市交通局,2009年3月)
外観デザインの特徴
30系以来、大阪市交通局の伝統ともいえるシルバーカーの伝統を脈々と受け継いだ無塗装ステンレス製車両がベースです。
また、60系で初採用された前面ガラス部のブラックフェイス、10系で採用された左右非対称の前面形状…と、これまでの大阪市交通局で採用されてきたデザインコンセプトが随所に散りばめられています。
これらをベースとした上で、前面に採用された曲面ガラスや、側面の上部目一杯まで配されたラインカラーのラダーデザインが、30000系ならではの新たなデザイン要素となっています。
特にラダーデザインは、新20系のリニューアル車両にも採用されるなど、交通局の新たなデザイン上の特徴となっています。
一般的なステンレス車両は、先頭部分のみデザイン上の自由度が効くように鋼製やFRP製、あるいは鉄製の前面を取り付ける場合が多いのですが、30000系は大阪市交通局伝統のステンレスにこだわり、ステンレス叩き出しで作られています。
また、新20系まで存在したビードが完全になくなり、レーザー溶接の採用もあって、非常にすっきりとした車体構造となっています。
車内の様子
31601~03編成
30000系初期導入編成(31603編成まで)は21系をベースとした良く言えば落ち着いた、悪く言えば先進的ではない車内となっています。
これまでの21系では、座席は5.5人がけ(公式発表上は6人)といった佇まいでやや窮屈でしたが、30000系は着座定員を5人と割り切り、バケット化することで余裕ある空間となりました。
31604編成以後
民営化を見据え、大幅なマイナーチェンジ版となった31604編成以後に投入された車両は、それまでの30000系とはまるで別物といえるほど、大幅なアップデートを果たしました。
座席袖部分には大きなアクリルガラスを採用した他、「新幹線シート」と話題になった豪華なバケットシートが採用されています。
座席横の袖仕切り
先述しましたが、3次車となる08編成から、袖仕切りが180mm上部にもう1枚追加されて2枚になりました。
ご覧のように1次車は座席横の仕切りが1枚ですが…
3次車(08編成~)からは仕切りが2枚になっています。
車内設備
ドア誘導灯
1次車は扉の端にあります
3次車は扉真ん中に位置。
御堂筋線の30000系では全車が真ん中に搭載されています。
LCD液晶
谷町線仕様(32601~32613編成)
大阪市交通局としては初めてのLCDモニタを採用。交通電業社製の15インチ液晶モニタものが採用され、新20系と同様に扉開閉案内装置と交互設置となりました。
1次車の啓発表示(下段)部分は太字
3次車はアンチエイリアスの利いた細字になっています。
御堂筋線仕様(31601~31614編成)
一方、御堂筋線では16:9の横長ディスプレイを採用。表示デザイン・UIも三菱電機製「セサミクロ」になっています。
31610編成からは液晶を2枚採用したデュアルディスプレイへと更に進化しました。左画面には広告が、右画面には路線図が表示できます。
また、従来1枚ディスプレイだった31601~31609編成についても、2017年6月から順次デュアル化の改造工事が行われました。現在では、御堂筋線30000系全編成がデュアルディスプレイとなっています。
谷町線30000系の導入年次
32601F – 先行試作車 2008年導入
プロトタイプ(先行試作車)である01編成は、2008年3月から運行を開始しました。
画像のように当時は方向幕が3色LEDでしたが、後に1次車ベースのフルカラーLEDに改造されています。
32602~04F – 1次車
2009年に02編成が導入、2010年に03・04編成が導入されています。02編成から方向幕がフルカラーLED化し、01編成も後にこれにあわせた改造工事を受けています。
05~07F – 2次車
2011年度には2次車として、05~07編成が導入。
08~10F – 3次車
2012年度に導入された3次車。御堂筋線30000系で得たデータをフィードバックした仕様となりました。
この編成から、座席端の袖仕切りが2段仕様となっています(後述)
11~13F – 4次車
最終タイプの3編成は2013年度に導入。仕様は3次車と同一です。全編成が出揃うまで5年の歳月がかかっています
御堂筋線30000系の導入年次
(執筆中)
デビューまでの流れ
谷町線用編成は、2009年3月18日に営業運転開始。
初日は大日→八尾南の1往復運転でしたが、八尾南ではドアが閉まらないトラブルが発生するなど、必ずしも万全ではなかったようです。
2013年までに、30系置き換え用の全13編成が出揃いました。
一方で、御堂筋線編成は2020年現在でも投入が続いています。
これまでは10系16編成までの比較的古いグループ(VVVF化されていない車両)を置き換え対象としていましたが、2019年に入り、新しいグループである10A系も廃車対象として置き換えがスタートしています。
2020年10月現在、全17編成が稼働中です。
主要諸元表
谷町線
形 式 | 32900(Tec2) | 32200(Ma2) | 32300(M) | 32800(T) | 32100(Mb1) | 32600(Tec1) |
車体構造 | ステンレス | |||||
車 種 | ||||||
自 重 | 33.0t | 36.0t | 36.0t | 25.5t | 36.0t | 33.0t |
定 員 | 130(座席33) | 140(座席39) | 140 | 140 | 140 | 130 |
車体長 | 先頭車18,900mm (中間車18,700mm) | |||||
車体幅 | 先頭車2,890mm (中間車2,880mm) | |||||
車高 | 3,745mm | |||||
制御方式 | 回生ブレーキ付 VVVF-IGBTインバータ制御 | |||||
主電動機(140kW) | ○ | ● | ● | ○ | ○ | ○ |
歯車比 | 99:16≒6.16 | |||||
運転台 | ツーハンドル(P3、N1、B6、EB1) | |||||
営業最高速度 | 70km/h | |||||
設計最高速度 | 70km/h | |||||
加速度 | 2.5km/h/s | |||||
減速度 | 3.5km/h/s(常用最大) 4.5km/h/s(非常時) | |||||
集電方式/電圧 | 第三軌条上面接触式 / 三相交流750V TC-21 |
|||||
(設置台車) | 設置 | 未設置 | 設置 | 未設置 | 設置 | 設置 |
所属 | 大日検車場 |
御堂筋線
形 式 | 31600 | 31000 | 31100 | 31700 | 31400 | 31800 | 31500 | 31300 | 31200 | 31900 |
車体構造 | ステンレス | |||||||||
自 重 | 33.0t | 36.0t | 36.0t | 31.0t | 36.0t | 25.5t | 25.5t | 36.0t | 36.0t | 33.0t |
定 員 | 130 | 140 | 140 | 140 | 140 | 140 | 140 | 140 | 140 | 130 |
車体長 | 先頭車18,900mm、中間車18,700mm | |||||||||
車体幅 | 先頭車2,890mm、中間車2,880mm | |||||||||
車高 | 先頭車3,745mm、中間車3,735mm | |||||||||
制御方式 | IGBT-VVVFインバータ制御装置(回生ブレーキ応荷重装置付) | |||||||||
主電動機(5M5T)定格電圧550V 3相かご形誘導電動機 定格出力140kw(4台/両) |
○ | ● | ● | ○ | ● | ○ | ○ | ● | ● | ○ |
歯車比 | 6.19≒99:16 | |||||||||
運転台 | ツーハンドル(P4、N1、B6、EB1) | |||||||||
営業最高速度 | 70km/h | |||||||||
台 車 | 空気ばね付全溶接構造、車輪径860㎜、固定軸距2,200㎜ | |||||||||
加速度 | 2.8km/h/s | |||||||||
減速度 | 3.5km/h/s(常用最大) 4.5km/h/s(非常時) | |||||||||
集電方式/電圧 | 第三軌条集電/直流750V | |||||||||
集電装置 | 第3軌条上面接触式 | |||||||||
(設置台車) | ● | ● | ○ | ● | ● | ○ | ○ | ● | ● | ○ |
所属 | 中百舌鳥検車場 |
解説(記載中)
Table1 Specification of Type SVM170-4050A
項 目仕 様
方式
主回路方式ダイレクト変換2 レベルインバータ
制御方式PWM 制御による出力電圧制御
冷却方式自然冷却方式(ヒートパイプ冷却)
入力
定格電圧DC750V
電圧変動範囲DC500V ~ DC900V
定格電流DC214A
交流出力
定格容量170kVA
定格電流AC245A
定格電圧AC400V
出力種別交流三相3 線式(中性点接地)
周波数60Hz
負荷力率0.85
電圧精度± 5%
歪率5%以下
直流出力
定格容量16kW
定格電圧DC100V
定格電流DC160A
その他
効率90%以上
騒音65dB 以下
AC1