【調査研究】今里筋線は何故上新庄に延伸しなかったのか?




今里筋線は構想当初から長らくの間、起点が上新庄とされてきました。

このルートはトロリーバスがあった頃からの由緒正しき路線で、現在でも大阪シティバス35号系統・86号系統がロングドライブ路線を設定しています。

ところが急に起点が「井高野」へと変更されその理由が「新幹線の高架をくぐれないから」とまことしやかに語られているらしいのです。

しかしながら現在でも瑞光四丁目駅南側で新幹線をくぐっていますし、大阪以外でも新幹線の下をくぐる地下鉄というのは多数事例があり、技術的にそう難しいことではないはずで今ひとつ腑に落ちません。

 

結論から言えば「沿線人口が井高野のほうが多かったから」という割と誰しもが納得できる理由でした。イメージでは上新庄の方が賑わいのある雰囲気ですが、データだとわずかに井高野がそれを上回っていました。

ただ、先述した「新幹線の下が通れない」という点についてはそれを認めるだけの資料が見つからず、今ひとつ納得のいっていない部分です。

今回は実地調査、大阪市会(市議会)の議事録、並びに市会図書館での資料調査、大阪市建設局の土地図面調査までも足を伸ばし、1年かけてコツコツゆっくりと足で情報を稼いできましたので、よければその顛末を御覧下さい。

 

調べた資料

①実地調査
②大阪市会 議事録並びに市会図書館
③大阪市建設局 土地図面

また、協力としていつもお世話になっているNはるさんからも各種情報提供を頂きました。

 

①実地調査

さて、まずは実地に行って調査してみると不可解な点が浮かび上がってきました。

現地は大隅1丁目交差点にあたります。

ちょうどこの高架の下部分。道路部分には橋脚が開けられているのですが、ピアーの基礎というのはそこへ干渉するものなのでしょうか

この橋は「瑞光第二架道橋」と書かれています。大阪幹線工事局、昭和37年8月とあります。

 

上新庄の方?

先程の不可解なものと違って、阪急上新庄駅についてはややそうである可能性があります。というのも、こちらは道路真ん中にもう1本橋脚があるのです。

ただ、答申ではハッキリと「東海道新幹線の橋脚」と書いていますので、こちらの線は薄そうです。

 

 

②大阪市会議事録

地下鉄第8号線についてでございますが、平成元年5月の運輸政策審議会答申第10号におきまして上新庄から湯里六丁目間が盛り込まれ、それを受けまして、平成元年11月に上新庄~湯里六丁目間を「大阪市交通事業の設置等に関する条例」に組み込んだものでございます。その後、平成8年12月に市会において御議論いただき、起点を上新庄から井高野に変更し、井高野~湯里六丁目間が次期整備路線とされました。

山本交通局総務部鉄道事業企画担当課長  平成22年度決算特別委員会(公営・準公営企業)平成23年10月-10月13日-06号 

 

ルートにつきましては、近年の東淀川区における住宅整備の状況や鉄道利用の不便さなどを考慮いたしまして、答申におきましては上新庄~湯里6丁目となっておりますルートを井高野~湯里6丁目へ変更し、輸送需要の確保を図るように考えております。

笹倉交通局長 平成8年12月臨時会常任委員協議会(交通水道)-12月13日-01号

 

この時点の付属資料として、井高野と上新庄とで比較された資料がありました。

起点 井高野 上新庄
機種 リニア地下鉄
営業延長
建設延長
 18.6km
18.7km
 18.0km
18.3km
人口
常住人口
従業人口
流出入人口
621,441人
276,071人
486,039人
591,548人
275,796人
474,193人
地域整備状況
公的住宅数
S60以後公的住宅整備
131団地 約40,300戸
13,912戸
交通現況
鉄道未整備地区面積
鉄道未整備地区人口主要交差点渋滞時間
バス走行速度
10.33km^2
167,400人
16,190人/km^2
10時間55分
江口橋~太子橋 4.2~8.5km/h
現況交通量
総量
マストラ利用者
沿線バス乗車人員
2,503,000人
683,900人
84,000人
2,436,100人
665,800人
84,000人
将来輸送需要  328,000人
 17,700人/km
 312,300人
17,400人/km
建設費概算  4,470億円
(239億円/km)
  4,314億円
(236億円/km)

出典:『条例路線の調査結果について』平成8年12月臨時会常任委員協議会(交通水道)-12月13日

 

ご覧のように、人口や輸送量では井高野案の方が上回っています。

常住人口はともかく、阪急線乗り換えからの通過需要があるかな…とも思ったんですが、上新庄や京都線沿線から梅田(阪急)・難波(阪急-御堂筋線)へはどちらも既存線の方が早く移動できそうです。

 

この地下鉄を建設するに当たって、このルートについて私たち東淀川の議員団、前の高建本部長を初め、関係の方々から御相談をちょうだいいたしました。
6人議員がおるわけでございますけれども、異口同音に口から出てまいったのは、上新庄を通してやと、上新庄の駅で阪急電車に結合できるようなルートをつくってくださいと、こういうことで話をしておったわけでございますけども、残念ながら先に東海道新幹線が走っておりまして、その東海道新幹線の新幹線を支えておるピアーの基礎ですか、これをどうしてもクリアすることができないと。
こういうことから、残念ながら私たち事務屋でございますので、技術屋さんには勝つことができなかって、したがって、新幹線の下をくぐる手前から豊里から大隅、そして西江口橋の下を通りながら井高野に到達をすると、こういうルートになって今工事にかかっていただいておるところでございます。

壷井美次委員 平成13年3月定例会常任委員会(交通水道・通常予算)

こちらについては、ピアーの基礎が支障すると書いている割にはそういった資料がありませんでした。

また、Nはるさんいわく道路下には斜めに水道管が通っており、基礎構築関係があるとは考えにくいのです。

 

各説の検証

上記の各資料から、それぞれの説を検証していきます。

単純に人口が多かった説

今の所もっとも納得のいく理由がこれ。資料にもあったように輸送人口は井高野案の方が上です。

おそらく上新庄延伸案だとだいどう豊里駅に次に設置することになりますが、井高野案だと途中に瑞光四丁目駅が追加され、乗降人員が増えます。こういった点からも納得のいくものでした。

 

道路構造物の関係で出来なかった説

こちらはやや怪しいところ。

現在今里筋線が通る新幹線の橋脚下の区間として瑞光四丁目~だいどう豊里間がありますが、こちらはかなり細いところを通しているのにも関わらず、それより圧倒的に広い国道479号線で出来ないというのは考えにくい。

ましてや、高い技力と豊富なノウハウを誇る隧道構築におけるスペシャリスト集団を抱える大阪市交通局だと、なおさら考えにくいのです。

しかもこれを言い出したのは人口のデータが出た更に5年後という点も不可解です。

 

阪急の反対にあった説

やや可能性があります。というのも、以前お話した「四つ橋線の延伸に南海がストップをかけた」前例があるためです。

直接的な関係があるかは立証できませんが、今里筋線開業後のダイヤ改正において上新庄駅に準急を停車させています。

南海電鉄は激怒した。必ず、かの大阪地下鉄を除かなければならぬと決意した

 

関連リンク

http://pineameikaga99.cocolog-nifty.com/blog/2018/05/post-73ec.html



Photo/Writer:Osaka-Subway.com  2018/07/11



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