【形式紹介】長堀鶴見緑地線 70系

【形式紹介】長堀鶴見緑地線 70系

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Osaka Metro(大阪市高速電気軌道)70系車両は、1990年3月20日より営業運転を開始した長堀鶴見緑地線用の車両です。

1990年に鶴見緑地で行われた花博へのアクセス路線として開業した「鶴見緑地線」の列車として営業を開始しました。

編成表はこちら

 

車両概要

試験車「LM-1」

リニア地下鉄は、「御堂筋線をもう1本掘れないか」というところからスタートしました。

当時の大阪市交通局長であった今岡鶴吉氏は、御堂筋線は乗車率が300%を超えるほどの混雑ぶりを見せていたことから、その混雑を捌くべく「第2御堂筋線」を作ろうと考えていました。

狭い御堂筋の側道に掘らなければならないので、必然的に内径4m程度の小さい地下鉄が必要になります。「リニア地下鉄」は、ここからスタートしたのです。

ちなみに、結局この「第2御堂筋線」の構想は実現しませんでした。

 

 

そこから10年度の1983年。茨城の日立製作所ではリニア地下鉄のテストが行われていました。

これは、全国的に地下鉄建設コストの高騰が問題になっていたことが背景にあります。

1975年に1kmあたり50~80億円だったのが、オイルショックの影響で人件費・材料費・用地費の全てが上がった結果、1987年には1kmあたり300億円にまで膨れ上がるなど、異常な高騰を見せていました。

小さい地下鉄ならトンネルの建設費も安くすることができ、もっと地下鉄を作れる…!」という視点から研究が続けられていました。

 

写真提供:丸に木瓜様

この研究は日立製作所を中心に、住友金属・住友電気・東急建設・東日交通コンサルタント・日本エヤーブレーキ・日本車輛製造・日本信号・不動建設・三菱電機の10社、および、JREA(日本鉄道技術協会)を中心に進められました。

10社が結集し、日本初のリニア地下鉄車両である「LM1」が1983年12月に落成。いわば長堀鶴見緑地線や今里筋線の御先祖様にあたる車両です。

 

LM-1の仕様

項目 仕様
電圧 直流750V
軌間 1,067mm
最高運転速度 70km/h
寸法 [mm] 長さ12,000 x 幅2,450 x 鷹さ3,045
自重 18.2t
車輪径 520mm
床面高さ 700mm
室内高さ 2,050mm

LM-1は日立水戸試験線において、1984~85年にわたって走行試験が行われました。

 

 

70系試作車の登場

 

出典:大阪市交通局「大阪市地下鉄 リニアモータ試作車両走行試験」

その後、日本地下鉄協会の「LM-2」を経て1988年に登場したのが、現在の70系試作車です。

本命である「リニアーモーター試験車」と、もう一つ「ロータリーモーター試験車」の2タイプがそれぞれ2両編成で生まれました。

両車は南港に設置された試験線にて1988年~89年までテストが行われた後、現在も運行中の編成へそれぞれ組み込まれています。

組み込まれた編成は以下の通り。

 編成名 竣工日  製造  備考
 7111F 1990.1.31 日本車輌 7061・7161号車は
元リニアモーター試験車
4号車
7111

3号車
7261

2号車
7061

1号車
7161

 

 7112F 1990.1.31 アルナ車両 7262号車は
元ロータリー試験車
4号車
7112

3号車
7262

2号車
7062

1号車
7162

 

 7113F 1990.1.31 近畿車輌 7113号車は
元ロータリー試験車
4号車
7113

3号車
7263

2号車
7063

1号車
7163

 

1つの車両ではなく、3つの編成にそれぞれ組み込まれて走行しています。

11編成のうち、7161・7061(門真南寄2両)についてはリニアモーターの試験車が、12編成の7262、および13編成の7113(大正寄2両)については、ロータリーモーターの試験車が組み込まれています。

 

どちらも01編成(7101)よりも先に登場した車両で、長堀鶴見緑地線の中では最も古い編成となります。

 

 

車両デザイン

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シルバーが多数を占める大阪市営地下鉄において、アルミ車体ながらアイボリーカラーの塗装を採用。そこにラインカラーである萌黄色とグリーンのラインを配置したカラーリングとなっています。

当初、南港試験線でテストを行っていた時はアルミ地むき出しの銀色で、量産車発注時も無塗装の予定でした。

しかし、鶴見緑地線は1990年に行われる「花と緑の博覧会」へのメインルートアクセス路線であり、路線のイメージアップが求められた結果、急遽全塗装が採用されました。

 

パンタグラフには、日本初のシングルアームパンタグラフとなる(PT7002-A)を採用しています。

 

1990年に投入された1次車グループ。路線カラーは側面のみに留まります。

現在は全てリニューアルされ、見ることが出来ません。

1997年以降に投入された2次車以降のグループは前面に萌黄色が大きく入り、また「7」のアクセントが小さくなりました。

 

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ミニ地下鉄規格を採用していることもあり、車内の高さは2.15mしかありません

 

側面方向幕は大阪市交通局としては初のLED式を採用。長らく唯一無二の存在でしたが、2008年に登場した30000系でも採用され、以後他路線へも本格的な普及が始まりました。

【LED表示機が採用されている形式】

・70系(長堀鶴見緑地線)
・30000系(谷町線・御堂筋線)
・30000A系(中央線)
・400系(中央線、フルカラー)

70系が登場したのが1990年ですから、およそ18年にわたって70系のみにLED方向幕が採用されていたことになります。

 

 

個性豊かな車内LED

当初は車内案内機として2段式の大型LED装置を採用していました。

大きな表示面を活かして、このようなアニメーション表示も可能でした

実際に動いている様子。今になってみると、どこかメルヘンチックかつレトロフューチャーですねぇ。

回送時などの非営業時には、色を反転させた表示に。

日付表示も可能のようでした。

 

リニューアル工事

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【長堀鶴見緑地線】7101F(70系1編成)リニューアルの為、陸送搬出

製造から20年が経過し、老朽化が目立つようになってきたことから、他車両と同じように70系についてもリフレッシュ更新を行うことになりました。

第一陣となったのは、元ロータリーモーター試験車であった70系13編成でした。

 

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リニューアルされた70系。これまでよりもラインカラーが強調されたデザインへと変わりました。従来の部分のほか、上部や扉にも入っています。

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試運転を行う70-07編成。

 

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70-05編成からは、さくら色を基調としたデザインへと変更。

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何故路線カラーと関係のないさくら色なのかですが、「鶴見緑地公園・大阪城公園があり、上を通る長堀通の華やかなイメージから」なのだそう。千日前線と被りませんか

 

現在のリニューアル編成は、すべてこのさくら色がモチーフとなっています。

 

70系の改造費用は編成によってまちまちですが一例を挙げると、平成29年10月に川重車両テクノが落札した編成については、8275.1万円で請け負われています。

 

 

後付でファンを設置

ミニ地下鉄である70系車両は車体が小さく低いことから送風機がありませんでした。

しかし冷房装置の出力が不十分で「暑い」という意見が多く寄せられたことから、2016年の70系06編成のリニューアルより室内送風機を増設しています。

 

DSC08727_1 - コピー

70系のエアコン送風口はこの箇所だけなのです…。

 

 

 

主要諸元表

 形 式 7100(M2c) 7250(M1e) 7050(M1e) 7150(M2c)
 車体構造 アルミ
 車 種
 自 重 26.5t 24.5t 24.5t 26.5t
 定 員(~7113F) 89(座席28) 101(座席38) 101(座席38) 89(座席28)
 定 員(7114F~) 89(座席30) 101(座席38) 101(座席38) 89(座席30)
 車体長 15,200mm(連結器含まず・先頭)、15,000mm(中間)
 車体幅 2,490mm
 車高 3,120mm(先頭)、3,115mm(中間)
 制御方式 【更新前】回生ブレーキ付 VVVF-GTOインバータ制御
【更新後】同 VVVF-IGBTインバータ制御
 主電動機(100kW)
 歯車比
 運転台 ATO プッシュボタン式
 営業最高速度 70km/h
 設計最高速度 70km/h
 加速度 2.5km/h/s
 減速度 3.5km/h/s(常用最大)  4.5km/h/s(非常時)
 集電方式/電圧 ばね上昇空気下降式シングルアーム / 架空電車線式 1,500V
 集電装置
 (設置台車)
 所属 鶴見検車場

 

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参考文献

宮腰卓恭(大阪市高速電気軌道)『リニアメトロ歴史シリーズ 第2回 長堀鶴見緑地線の歴史を辿る』、SUBWAY 日本地下鉄協会報 第218号

庄山佳彦、安藤正博『 リニアモータ方式による小断面地下鉄電車』、JREA、1984年12月

 




書いた本



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