【特集】大阪地下鉄の顔「新20系」を振り返る

【特集】大阪地下鉄の顔「新20系」を振り返る

撮影:もぐら様

ついに廃車が始まった新20系。

御堂筋線・谷町線・四つ橋線・中央線・千日前線の第三軌条5路線に導入され、全560両の大阪市営地下鉄・大阪メトロを代表する形式でしたが、その牙城が崩れ始めました。

今日はそんな新20系を記念して、ざっくりとこれまでを振り返ります。

 

導入まで

撮影:七鶴様

それまで活躍していた50系や大量導入された30系を置換えるべく、30系と同じ大量に製造されたのがこの新20系シリーズです。

1990年に谷町線22系、四つ橋線23系から導入を開始。続いて御堂筋線(21系)・中央線(24系)・千日前線(25系)にも導入されていきました。

これまで他線のお下がりばかりだった千日前線では、初めての新車となりました。

機能的・システム的には20系を踏襲し、デザインのみがリファインされた車両で、MT配列や組成などは20系と同一となっています。

例えば、先頭車両が600号車・900号車であることも20系と同じです。

20系のアルミ車体からステンレス車体へと変更、内装・外装共に大幅なブラッシュアップを図り、居住性を高めた所謂ビッグマイナーチェンジといえるモデルです。

 

デザイン性を高めたい

新20系の製造に当たっては、こんなエピソードが残されています。

ある日、S交通局長に私は呼ばれて、「うちの地下鉄の車両は、性能は優秀だろうがファッション性に欠けている。私は技術屋でないので指示をしても技術陣がなかなかきいてくれない。塗装をしてファッション性をもった車両を計画するについて、ひとつ力を貸してくれないか」と言われた。ちょうど私は川島さんの「関西通勤電車大研究」という書物を読んだあとであった、この書物で30系の外観の悪さが痛烈に批判されているのを読んで、世の中の変遷が早いのに比して、車両の寿命が長いのは困ったものだと痛感していたところだった(中略)

ところが、技術部長も車両課長も、車両に塗装をしてでも見ばえの良い新造車をという私のアドバイスに対して、「それはおかしい.自分のつくってきた伝統を自分でこわそうというのか」と、30系の無塗装を例にあげて、頑として反対するのである。

出店:電気車研究会『鉄道ピクトリアル 1993年12月 No.585<特集>大阪市交通局』「宮本政幸氏と大阪の地下鉄」、赤松義夫

S局長は、この時代の局長であった新谷春彦氏か、もしくは阪口英一氏のどちらかであると思われます。

いわば当時の大阪市交通局では、「シルバー・無塗装こそが美学」という意識が根底にあったようです。

そこで、そのテイストはそのまま受け継ぎ、それ以外のデザイン面にて大幅なリファインが行われました。

 

22系

前面形状は流線型を意識したような、くの字に折り曲がった顔つき。

ヘッドライトを真ん中腰部分にニ灯配置するモノアイなデザインとなり、また、当時は珍しかったLED式のテールライトを両端に配置しました。

そしてVVVFロゴを新たに新調し、右上部分とLEDテールライト近傍に掲示しているのが大きな特徴です。

車体は20系のアルミから新しくステンレスへと移行。板厚が薄い割にアルミと同等の軽量化を行うことが出来ました。

側面ラインカラーは前面から一体的に続くデザインとなっていますが、これは新20系にて初めて採用されたもので、それまでは扉部分のみ塗装が省略された「旧帯」というデザインでした。

また。側面窓も初めて「田」の字から脱却して1枚窓がそのまま下降するスタイルとなり、非常にスマートなデザインへ移行しています。

こちらが「田」の字形の窓割と旧帯側面デザイン。ここが違うだけで随分昔の電車に見えますね…

…などなど、元となった20系とは何から何まで全くデザインが違いますが、中身は殆ど同じというのがちょっと信じられないですよね(笑)

また、車内も近代化が図られています。

基本的には20系に準じていますが、貫通扉の窓が足元いっぱいにまで広げられて見通しが良くなりました。

蛍光灯には50系以来のカバーが復活。照度も上がり、車体端部で暗い印象だった20系とは一線を画したものになっています。

2017年には、緑木検車場で5路線を担当する新20系の並びが実現。

異なる路線カラーの新20系が出揃ったのは、後にも先にもこの1度だけと思われます。

 

転属

30系と同じく、第三軌条5路線で規格が一致している新20系でも、各路線への転属が行われました。

転属のし過ぎで30系ではナンバリングがごちゃごちゃになり、どの車両がどの線から来たのかが煩雑な状態になってしまったことを反省し、新20系では最初から5桁ナンバーの車番となっていました。

このこともあり、比較的わかりやすい状態となっています。

 

2005年:中央線から谷町線へ

最初の転機が訪れたのは、近鉄けいはんな線開業です。

けいはんな線では第三軌条最速の95km/h運転を行うことになり、電動機の出力アップなど従来の車両ではこなせない性能となりました。

そこで中央線車両をパワーアップすべく、当時更新時期に差し掛かっていた20系を中央線に集め、20系のパワーアップを行うことになりました。

その際に谷町線の20系30番台9本と、中央線24系の9本をトレードすることになりました。

【転属車両】
24605F >> 22655F
24606F >> 22656F
24607F >> 22657F
24608F >> 22658F
24609F >> 22659F
24610F >> 22660F
24611F >> 22661F
651F >> 22662F
652F >> 22663F

24系は新たに「22系50番台」と改称され、24605Fは22655Fへと名前を変えて谷町線へと旅立っていきました。

この22655Fこそが、先日新20系の廃車第一弾とお伝えした車両です。

 

幻の「水色新20系」

上記で2つだけ数字が少ない車両が居ますね。

これは元「OTS系」というモデルで、新20系と全く同じデザインながら色を水色ベースにした車両が、かつて中央線を走っていました。

コスモスクエア~大阪港間が「大阪港トランスポートシステム(OTS)」という別事業者が運営していたことが理由で、専用形式としてこの車両が2編成導入されました。

外観だけでなく、車内も水色を基調としたデザインとなっており、中央線24系とは大きく異なっていました。

2005年にOTSが鉄道事業から撤退して大阪市交通局が管轄することになりましたが、それでもしばらくはこのカラーの新20系が走っていました。

ロゴだけはVVVFマークに変更されています。

しかし、2006年の近鉄けいはんな線開業に向けて中央線へ20系を集約・高速化改造する際に、先述した24系の転属と同じく、谷町線20系とのトレード要員として、OTS系も転属することになりました。

その際に印象的だった水色のラインカラーは全て剥がされ、他と同じ22系として竣工。

現在では22系62編成・63編成として活躍していますが、車内の改装は難しかったのかそのまま水色基調のデザインで使用されています。

 

2015年:四つ橋線から中央線へ

四つ橋線がダイヤ改正により、所定本数から1本余剰となったことから、中央線の輸送力増強用に23系06編成(23606F)が、中央線へと転属しました。

こちらも転属車両には+50され、24系50番台となりました。

【転属車両】

23606F(四つ橋線) >> 24656F(中央線)

 

2017年:谷町線から四つ橋線へ

一旦は転出させた四つ橋線でしたが、今度はホームドア設置工事に伴う23系の改造で予備車両が必要になった為、谷町線22系から1本が四つ橋線へと転属することになりました。

こちらもまた車番に+50された「23系50番台」となっています。

【転属車両】

22606F(谷町線) >> 23656F(四つ橋線)

 

2022年:四つ橋線へ出戻り

一旦は中央線へ転属した24656Fでしたが、どういう理由なのか再び四つ橋線へと舞い戻り、再び「23606」のナンバーをつけることになりました。

【転属車両】
24656F(中央線) >> 23606F(四つ橋線)

 

2022年~:中央線から谷町線へ

2025年大阪万博の開催に伴い、新型車両30000A系、および400系の投入する中央線では、余剰となった24系4本を谷町線へ転属させることになりました。

2005年に転属したグループと同じく車番は+50され、22系50番台として竣工しています。

【転属車両】
24601F >> 22651F
24602F >> 22652F

24603F >> 22653F(未転属)
24604F >> 22654F(未転属)

尚、残念ながら24系50番台は03・04編成の転属前に55編成が廃車されたことで、全車が揃うことはありませんでした。

 

リフレッシュ改造

登場から20年が経過した新20系は、中間更新とリフレッシュ改造を行うことになりました。

大阪メトロでは概ね40年を車体寿命として車両計画が行われていますが、ちょうど半分の時期に差し掛かる頃に2010年から実施しています。(現在も継続中)

【改造内容】
※基本的には30000系に準ずる

・車体のブラッシュアップ洗浄
・VVVFインバータ素子のIGBTへの交換
・ブレーキのOEC-4Mへの交換
・LCDディスプレイの取付(初期の一部を除く)
・運転台機器のデジタル→アナログへの交換
・座席真ん中へセンターポールの設置
・車内照明のLED化
・車体端部側面へのラダーデザインカラー設置
・座席のバケット化
・ヘッドライトのLED化
・車内床色のサラミ化 線区ごとに個性を出したデザイン

このリフレッシュ改造を受けなかった車両については、22655Fのように廃車となる車両も出てきています。

 

平成の「大阪市営地下鉄」

平成の、そして大阪市営地下鉄の顔であった新20系。

昭和期の大阪市営地下鉄を振り返ると30系が居るように、平成期を振り返ると新20系が思い起こされる時代がやってくるのでしょうねぇ…

まだ廃車は始まったばかりですが、今後の動きは逐一当サイトで発信していきますので是非チェックして下さいね。

 

関連リンク

【形式紹介】大阪メトロ新20系




書いた本



特集カテゴリの最新記事