現在の大阪メトロの第三軌条5路線は、緑木検査工場1つで全ての電車の検査を賄っていますが、かつて大阪市交通局の時代だった時には緑木の他に森之宮検査工場でも全般検査を行っていました。
そのことから歴史的に、御堂筋線と四つ橋線(緑木グループ)と、谷町線・中央線・千日前線の3つ(森之宮グループ)とでは同じ顔つき・規格ながら若干系統が違っていました。
そのうちの一つに連結器の違いがあり、「緑木形自動密着連結器」と呼ばれるタイプと「森之宮形自動密着連結器」と呼ばれる2タイプが存在しています。
緑木形
御堂筋線・四つ橋線は緑木形の自動密着連結器です。
連結器は上下が非対称で、下側に何かしらの配管を繋ぐ部分が設置されています。
森之宮形
谷町線・四つ橋線・千日前線は、森之宮形の自動密着連結器です。
こちらは上下対称の形になっていて、(後ほど紹介しますが)かつて配管があった時代の名残と思われる形状になっています。
両者を比較
両者を比べてみましょう。
連結器の形状自体は同じながら、ご覧のように連結器部分の上部に若干の違いが見られますね。
新20系のカタログによると、緑木形の方が50kgほど重量が軽いようです。
21系/23系 (緑木形) |
22系/24系/25系 (森之宮形) |
|
---|---|---|
許容引張力 | 40tonf l392kNl | |
緩衝容量 | 40tonf l392kNl x 49mm | 40tonf l588kNl 45.5mm |
重量 | 350kg | 400kg |
昔の電車は?
かつて走っていた地下鉄車両達の連結器も見ておきましょう。
森之宮検車場内にて保存されている、3008号車の連結器も覗いてみると…
森之宮形の自動密着連結器ですね。上部に配線穴があるのが、現在のものとの違いです。
初代100型の連結器はこんな感じ。製造は住友金属工業が昭和4年に最初の密着連結器として開発したものです。
上の穴はブレーキを伝えるブレーキ管、下は元空気溜管です。
見えづらいですが、下の両脇にも穴があり、こちらは制御管となっています。
何故違うのか?
同じ局内で何故2つの違う形状の連結器があるのかですが、当時の文献によると以下のような流れなのだそうです。
100型で採用した連結器を1200型まで採用(645kg)
▼
5000-5500形(後の50系)から軽量化したモデル(ここではAモデルとします)を採用、400kgに
▼
中央線の新規開業に伴い用意された6000形で、軽量化・合理化を目指し、また御堂筋線車両と関わりがないことから大幅に設計変更したモデル(ここではBモデルとします)を開発。380kgに軽量化
▼
30系で軽量なBモデルを採用し、御堂筋線に集中投入。反対にAモデルを採用した50系は谷町線や中央線に転属。
▼
結果的に御堂筋線・四つ橋線はBモデル(緑木形)、谷町線・中央線・千日前線はAモデル(森之宮形)となり、現在まで継承される参考:大阪市交通局「大阪市地下鉄建設五十年史」
つまり源流は森之宮形で、緑木形はそれを改良して再設計した連結器なのだそうです。
ちなみに、現在増備中の400系では緑木形、
30000A系も同じく緑木形を採用しています。
中央線を走る従来車両(20系や近鉄車など)の連結器に変更はないことから、ある程度の互換性はあるものとみられます。
連結器の統一というのは、(コストや手間的に)なかなか難しいようですね。
取り替えればそれで終わりなのでこれまで統一されてこなかったのだとは思いますが、今後森之宮型を見る機会は減少していきそうです。
関連リンク
参考文献
大阪市交通局「新20系電車」