大阪都構想実現後、もし大阪市交通局が民営化すれば各路線はどうなるのか?

大阪都構想実現後、もし大阪市交通局が民営化すれば各路線はどうなるのか?

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Yahoo!知恵袋にこんな記事がありました。

大阪市営地下鉄が民営化すればこうなる。
http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n293942

私自身、大阪市営地下鉄の上場民営化には反対派ですが、それでもこの方の仰る民営化後の大阪市営地下鉄がどうなるか、を断定して記したこの記事は、(反都構想派の方でしょうか?)バイアスがかかり若干実態とズレています。

 

参考リンク

 

大阪市営地下鉄の現状

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2003年:経常利益(年ごとの支出収入の合計)が黒字に

2010年:トンネルの建設費など、長期ローンが組まれていた赤字を全て完済。

2013年:経常利益303億円

2014年:経常利益343億円

2013年度の経常利益は303億円、2014年度の経常利益は348億円…と着実に収益が上がって来ています。

交通局は「乗客が増えたものの、利用料金を下げたので運輸収益自体は16億円マイナス。水道・光熱費の削減の成果が大きい」としていますが、中期的には新線凍結の効果もあるのでしょう。

市会議員が手柄を上げるための新線建設がストップされているのは良いことではないでしょうか。

 

 

民営化するとどうなるのか?

市会議員が手柄を上げる為、とにかく建設させることがなくなる

今里筋線は確かに路線敷設計画はあったものの、結果的には並行するバス路線の廃止も出来ていない現状を見ると、必ずしも必要であったかどうかには疑問が残ります。

必要であったかどうか疑問が残る路線を、それでも建設した背景には、この一帯の地盤を持つ磯村前市長の影響もなかったとは言い切れません。

 

利益の出る路線は増便、そうでない路線は減便…所謂”路線格差”が広がる

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簡単に言いますと人員を削減するために、必然的に運行本数を減らすことになる。

出典:http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n293942

先のページではこのように書かれていますが、必ずしもそういうことではありません。

 

公営企業と違って、民営会社の最大の目的は利益を出すことです。

当然、利益が薄い路線に対しては無人駅化やワンマン化などが行われる可能性もありますが、すべての駅でそうでないことはJRを見ても明確です。

 

JR西日本の新快速は全列車が12両運転になりましたし、各路線のスピードアップが目標に置かれ、大和路快速・紀州路快速などの新型車両を用いた速達便も増設されましたね。

要は、民営化されれば利益が取れそうな路線を、無理に人員削減してまで得られるであろうチャンスを見逃すはずがなく、儲かりそうな路線はこれまで以上に利益の出る仕組みを整え、そうでない路線は極力コストを抑えることが主眼となってきます。

 

御堂筋線や谷町線の都市部分など、現状利益の出ている路線はこれ以上に増便や編成増が検討されることでしょう。

 

 

「大阪市の縛り」がなくなって建設や運用に柔軟性が出てくる

大阪市営地下鉄はあくまで大阪市内をくまなく運行するために作られた路線。大阪市外には基本的に出ず、大阪市民の利益にならないことはしないスタンスです。

 

例えば、御堂筋線のかつての終着地はあびこで、車庫もあびこにあったのですが、堺市のなかもずに延伸したのは「手狭になったあびこ車庫の代わりに、広い車庫用地の提供が出来る」という見返りがあったからこそです。

 

ですが、民営化すると大阪市民のことを一番に考えなくてよくなるので、他線との直通運転など、エイプリールフールネタとして書いた「今里筋⇔長堀鶴見緑地線」の直通運転など、行先設定により柔軟さが出てくることも考えられます。

 

また、谷町線や中央線などの路線距離が長い路線では、快速運転が検討され始める可能性があります。

 

反対に、今里筋線など利益の出ない路線はこれまで以上に減便されたり、また先程上げた快速運転実施時の通過駅に関しても減便される可能性があります。

 

JRも民営化して20年が経った今、阪和線や大和路線の普通列車のみが停まる駅は、谷町線や今里筋線よりも長い12~15分の待ち時間を強いられている駅もあります。

 

そこで、今日は路線ごとに大阪市営地下鉄マニアの私が個人的に検証してみました。

 

御堂筋線(営業係数44)…増便

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2013年度データ

収入:66,838,000,000円

利益:37,417,000,000円

営業係数:44円

営業係数が山手線よりも低い御堂筋線は、ホームドア設置に伴って、列車本数間隔は若干の余裕を見て減便されるものの、全体的にはデータイムや夕ラッシュ、深夜時間帯などこれまで以上に本数が増加する傾向にあると思われます。

千里方面からの通勤ラッシュが酷く、また北大阪急行が箕面中央まで延伸されることも踏まえ、例えばTJライナーのような座席指定ライナー列車を運行する可能性もあり、運用の柔軟さという面では、四つ橋線との直通運転も検討されはじめるかもしれません。

 

延伸について

当初からほぼ計画通りに敷設された御堂筋線ですが、なかもず開業以後の延伸計画はありません。

 

谷町線(営業係数77)…現状維持?

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抜本的なダイヤ改正から既に20年が経過している谷町線は、ラッシュ時の輸送にやや偏りがあるように思われますが、ひとまずは現状維持のまま…、もしくは小運用(都島〜文の里)をなくして、全線大運用7分間隔で統一する可能性も。

車両システム的には中央線と近い(差は抑速ブレーキの有無と最高時速の引き上げ対応)ので、例えば大日発コスモスクエア行きのような直通運転もあるかもしれませんね。

 

延伸について

また、谷町線は大日から先、鳥飼経由高槻方面への延伸が「運輸政策審議会答申第10号 -22番」の中に構想として一応はありますが、競合路線の京阪電鉄が難色を示したこと、また莫大な費用がかかること、大阪市営地下鉄なのに大阪市の管轄からはみ出ることから、今のところ大日以遠の建設目処は立っていません。

また、八尾南以遠も同じく藤井寺経由富田林方面への延伸案として「運輸政策審議会答申第10号 -24番」の中に構想としてありますが、こちらも同じ理由で目処は立っていません。

民営化後は、”大阪市のみ”の縛りもなくなるので、採算さえ合えば延伸の可能性がありそうです。

 

 

四つ橋線(営業係数87)…御堂筋線と直通運転あるか?

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こちらも一応黒字の四つ橋線。御堂筋線との直通運転が視野に入ってくるかどうかというところですね。

四つ橋線と中央線とのトンネルが現在建設されたり、余剰となった23系車両が中央線に転属するなど、近年中央線との交流が続いていますが、両線が走行できるようになることで、旅客列車の直通の具体化も出てくるかもしれませんね。

 

延伸について

一応、「近畿地方交通審議会答申第8号」には阪急十三方面への延伸が答申されています。

これは大阪市内のみで完結しますし、計画としては実現に近いですが、完成させるには西梅田駅を掘削し直さないといけない(そのまま北進すると阪神梅田駅にぶつかる)などの理由から少し時間がかかりそうです。

また、この工事は2004年に大阪市が基本計画を発表していることから、民営化せずとも実現する可能性があります。

 

 

中央線(営業係数64)…快速運転の開始があるかも

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44年ぶりに黒字化を果たした中央線は、以来大阪市営地下鉄No.2の稼ぎ頭になるなど、着実に優等路線へと変貌しつつあります。

森ノ宮・新石切において退避設備があることから、長らく言われている快速運転が登場する可能性がありそうです。

また中央線は、谷町線・千日前線と線路がつながっており、また四つ橋線と連絡するトンネルが建設されていることから、多様な直通運転の可能性もあるかもしれません。

 

延伸について

「運輸政策審議会答申第10号」では北港テクノポート線として、夢洲・舞洲方面への延伸が計画されています。

道路構造物に関しては建設が完了しているものの、鉄道部分はコスモスクエア周辺の準備工事のみに終わっています。ただ、採算性に関して若干疑問符が残ることから、民営化すると建設計画が白紙に戻る可能性がありそうです。

 

 

千日前線(営業係数137)…減便の可能性あり

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ホームドア設置+ワンマン化を完了した千日前線は、車掌が不要となり運行コストが削減されることから、現行ダイヤのまま…でしょうか。

強いて言えば阿波座~今里間で区間折り返し運転の可能性もなくはないですが、現行ダイヤ(7.5分間隔)だと、ワンマン化でそれは若干厳しいところがあるので恐らくは現行のまま、あるいはもう少し間を開けて10分間隔になるかもしれませんね。

中央線との連絡トンネルが存在しますが、編成数の差異やホームドアへの対応など直通させるには若干課題が多いことから、こちらに関しては独立路線のままかと思われます。

 

延伸について

「運輸政策審議会答申第10号-23番」において一応弥刀方面への延伸が答申されていますが、弥刀方面はおおさか東線が開業したことによりその使命も薄まっているので、実現の可能性は薄そうです。

かつて野田阪神~神崎川の延伸が計画されたこともありましたが、現在の答申ではJR東西線の開業もあってか、こちらに関しては言及されなくなっています。

 

 

堺筋線(営業係数81)…急行列車の定期化

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現在定期ダイヤの合間に臨時便で何度か運行されている嵐山・京都河原町方面への急行列車が定期列車に昇格しそうですね。

停車駅を「天下茶屋・日本橋・天神橋筋六丁目」に絞った急行列車が運行されたり、66系が6連に短縮され嵐山直通列車を運行したりと、割と何でもやれそうです(笑)

延伸について

 1971(昭和46)12月08日の都市交通審議会答申第13号「大阪圏における高速鉄道を中心とする交通網整備増強に関する基本的計画について」では、堺筋線は動物園前から天下茶屋を経て中百舌鳥方面へ延伸するよう提案され、そのうち動物園前~天下茶屋間は緊急整備区間に挙げられた。

出典:http://naniwa-subway.net/subway-line/6_sakaisuji/6_sakaisuji.html

そもそも「堺筋線」 の名の通り、堺筋を下り堺市中百舌鳥までの延伸が答申されていましたが、その役目は御堂筋線に譲ったことから、現在堺筋線の延伸計画については何も予定がありません。

 

長堀鶴見緑地線(営業係数150)…直通運転があるかも

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車両規格が同一である、今里筋線との直通運転を実施する可能性があるかもしれません。

現在は鶴見検車場近くの単線トンネルで2線が結ばれていますが、50年先を見た場合、ゆくゆくは複線トンネルで両線をつなぐ可能性が出てくるかもしれませんね。

 

延伸について

かつて「運輸政策審議会答申第10号」においては門真南~交野方面への延伸が示唆され、2005年までに着工することが適当な路線として言及されたこともありましたが、2015年現在でも未着工なことからこちらは撤回されたものと思われます。

反対に、大正~鶴町への延伸計画は長らく存在し、「近畿地方交通審議会答申8号」においても言及されるなど、実現可能性の高い区間の一つとなっています。

 

今里筋線(営業係数245)…減便か

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厳しそうです。開業当時は8分ヘッドでしたが、現在は利用者低迷から10分ヘッドに間隔が開きました。しかし、それでも乗客が少ないことから15分ヘッドもありえそうです。

一方、先ほど書いた長堀鶴見緑地線との直通運転が行われるかもしれませんね。

 

延伸について

湯里方面への延伸が計画されていますが、現状の路線でも赤字であることや、BRTが計画として上がってきていることから、実現性は薄そうです。

 

 

国鉄との違いは累積黒字なこと

大阪市営地下鉄と同じ鉄道業だった国鉄ですが、その違いは「元事業者が膨大な累積赤字に悩まされていたこと」です。採算が見合わなかった「国鉄赤字83線」と呼ばれた路線は、その多くが建設を凍結されました。

つまり、大阪市営地下鉄でもこの先採算性の悪そうな路線延伸(例:今里筋線の湯里6丁目延伸など)は凍結されることと思われます。

 

一方、もし民営化されれば、それ以後は大阪市が運営しないことから「大阪市民の足として建設された大阪市営地下鉄」は、「原則大阪市内のみ」という縛りルールから開放され、採算が合うのであれば大阪市外への延伸も積極的に探っていくことが期待されます。

 

 

地下鉄民営化が必ずしも良い結果になるばかりでなく、このように過密地域がより強くなり、過疎地域が冷遇されることを頭に入れておいてくださいね:)

5/17に控えた大阪都構想住民投票。その渦中にある大阪市営地下鉄はどうなっていくのでしょうか。

 

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Photo,Writer :Series207  2015/05/11




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