「大阪市交通局が恋するフォーチュンクッキーを踊ってみた」の動画を見ていた時に、大阪市交通局だけがやたらと叩かれていることは以前記事にしましたが、その中でも「覚醒剤で8人もパクられてるwww」というコメントが以前から気になっていました。
・覚醒剤で8人もパクられてるwww
・大阪市営バスが30年連続赤字とか言ってたけど 年収1400万の運転手はまだ居るのかな?
・大阪市職員といえば不祥事のイメージしか無いよね。
・橋元氏退職で、カラ残業、カラ主張、ヤミ賞与 ヤミ年金、ヤミ退職金復活かもwww
確かに「なんとなく多い」印象ですが、本当にそんなにも覚醒剤で取り締まりを受けているのか…を調べてみました。
1996年
大阪府警生活安全特別捜査隊と泉大津署は、大阪市交通局のバス運転手、A容疑者(二九)=大阪府岸和田市中井町三丁目=と、堺市新梶尾台二丁、無職B容疑者(二五)を覚せい剤取締法違反(使用)の疑いで逮捕したと二十二日、発表した。(中略)
A容疑者は調べに対し、「五年前から覚せい剤を始めた。薬の効き目が残っている時にバスを運転して突然眠ってしまい、市バスをふらつかせるなど危ない目にもあった」などと供述しているという。
出典:『覚せい剤打ち運転も 容疑の市交通局員逮捕・起訴 大阪』朝日新聞大阪本社 朝刊,1996年4月23日
覚醒剤を打ちながらバスを運転していたこともある…と告白。
1998年
大阪市交通局の乗務員の詰め所で同僚に覚せい剤を売ったとして、都島署は三日、奈良県生駒郡平群町、市営地下鉄の車掌A容疑者(二四)を覚せい剤取締法違反(譲渡)の疑いで逮捕した、と発表した。
出典:『車掌また1人逮捕 覚せい剤譲渡容疑 大阪市交通局』朝日新聞大阪本社 朝刊,1998年4月4日
尚、この後22日付けでこの職員と、譲渡を受けたもう1人の職員は懲戒免職になっています。更に、別件で20歳の駅員も覚醒剤使用に関して懲戒免職処分を受けています。
2000年
大阪市交通局は二十七日、覚せい剤取締法違反(使用)の罪で大阪地検堺支部に起訴された大阪市バス運転手、A被告(三六)=松原市上田五丁目=を懲戒免職とした。
出典:『覚せい剤使用で職員を懲戒免職 大阪市交通局』朝日新聞大阪本社 朝刊,2000年1月28日
1996年~2000年のわずか4年の間に、覚醒剤取締法違反で5人も逮捕されています。これはひどい。
2009年
兵庫県警姫路署は16日、大阪市営地下鉄大阪港駅の運輸助役三田(さんだ)耕司容疑者(45)=神戸市北区松宮台1丁目=を覚せい剤取締法違反(使用)の疑いで逮捕し、神戸地検姫路支部に送検したと発表した。同署によると、三田容疑者は「20年前から覚せい剤を使っていた」と供述しているといい、この間に運転士も務めていた。
出典:『大阪市地下鉄助役、覚せい剤使用容疑 「20年前から」』<http://www.asahi.com/kansai/travel/news/OSK200904170024.html> 朝日新聞電子版,2009年4月17日
しばらく期間があいて2009年。再び覚醒剤取締法違反で逮捕者がでています。
2011年
大阪府警曽根崎署は1日、大阪市営バス運転手、中村和明容疑者(48)=大阪市東淀川区豊里4=を覚せい剤取締法違反(使用)の疑いで逮捕した。同署によると「数年前からストレス解消のために使用していた」と容疑を認めているという。」
出典:『大阪市営バス運転手、覚せい剤使用容疑で逮捕 吸引後に乗務か 』<https://www.nikkei.com/article/DGXNASHC0102R_R00C11A8AC8000/> 日本経済新聞電子版,2011年8月2日
平松市長時代の2011年。この逮捕を受けて抜き打ち一斉検査を行います。尚、一部職員(9名)は「人権侵害だ」として検査を拒否したそうです。
大阪市は9日、市交通局のバス運転手が覚せい剤取締法違反(使用)容疑で逮捕されたことを受けてバスと地下鉄の全乗務員を対象に実施した薬物検査で、男性地下鉄運転士2人から薬物使用の陽性反応が出たと発表した。交通局は「刑事処分に関係なく懲戒免職を含め厳正に処分する」としている。2人は市側に使用を否定している。
交通局によると、2人とも普段は地下鉄御堂筋線に乗務しているが、現在は自宅待機中。2人が検査を受けたのは8月17日で、通常勤務日だったといい、同局は薬物を使用しながら地下鉄に乗務していた疑いもあるとみている。
出典:『地下鉄運転士2人薬物陽性、大阪市検査で 使用を否定 』<https://www.nikkei.com/article/DGXNASHC0902H_Z00C11A9AC8000/> 日本経済新聞電子版,2011年9月10日
このうち1人は覚醒剤で、もう1人は大麻の使用で、それぞれが懲戒免職になっています。
覚醒剤使用による逮捕者は7名、懲戒免職者は8名にも及んでいることがわかりました。つまり、冒頭の「覚醒剤で8人も逮捕されている」というのは、逮捕はないながらも覚醒剤を使用している、という意味ではおおよそ真実でした。
局員による覚醒剤使用の摘発
2011年、平松市長時代の大阪市は、覚醒剤の抜き打ち検査による一斉摘発を実施。
先程も書きましたが、過去15年で7件のペースで覚醒剤使用による逮捕者が出ていました。ありえないことすね。
試しに同じ関西圏の市営交通事業者である京都・神戸や、比較対象に挙げた横浜でも検索してみたところ、京都と神戸は0件、横浜は1件でした。それだけ大阪の異常性が浮き彫りになっています。
この異常事態は、市会議員さんのページでも取り上げられています。
「市民の信頼」は地の底。
よく「市民の信頼を…」という決まり文句がありますが、この意味を本当にわかっていたのでしょうか。
今回取り上げたのは覚醒剤使用のみですが、この他にも売上金着服・乗務所内での飲酒による寝坊・海外視察で仕事をせずゴルフ・出勤扱いで政治活動の参加(カラ出張)…など、調べていて書ききれないほどの不祥事がありました。
大阪市民が交通局に対して持つ信用度合いは、2011年時点では地の底にあったように思います。
民営化の議論が再燃し始めた頃、どちらかというと交通局の方の必死の「民営化回避」のような動きもあったように思いますが、信頼が既に地の底だったからこそ、今回の民営化につながったのではないでしょうか?
その状況は、国鉄職員の度重なる不祥事に国民の信頼が地の底であり、その結果国鉄民営化に至ったあの状況とも似ている感じがします。
不祥事が判明した時は「またか」で終わるような問題も、こうして積み重なってくるとボディブローのように効いてくるのです。
現在は少しづつ回復
とはいうものの、近年になってからは大きな不祥事もなく、残った今の職員さんは、CS(顧客満足度)向上に必死に努められています。
野田阪神でのハロウィンイベントや御堂筋線フェスティバルなど、少し前では考えられなかったようなイベントもたくさん開かれ、特にハロウィンイベントは若年層の流行にうまくマッチして好評です。
もしも、1990~2000年代の時代にもっと早くCS向上につとめはじめていれば、心情的に大阪市民も民営化反対に同情的になり、大阪市交通局のままであったのかもしれませんね。
2018年4月1日をもって民営化(株式会社化)が行われる大阪市交通局。民営化まで、残りもう半年を切っています。
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Writer : Series207 2017/10/13