Osaka Metro(大阪メトロ)長堀鶴見緑地線は、2025年現在、門真南~大正間を結ぶ地下鉄路線です。
この路線は、1990年に「花博」に合わせて京橋~鶴見緑地間が開業したことを皮切りに、1996年には京橋~心斎橋間、1997年には心斎橋~大正間および鶴見緑地~門真南間が順次延伸され、現在の形となりました。
そんな長堀鶴見緑地線には、大正から大運橋を経由して鶴町(四丁目)までの5.5kmを延伸する構想があります。
鶴町延伸構想
出典:「大阪市交通事業の設置等に関する条例」に位置づけられた未着手の地下鉄計画路線の整備のあり方について
鶴町までの需要予測で検討された駅数は、大正駅を除いて6駅です。
大阪の地下鉄はおおよそ1kmごとに駅が設置される傾向がありますから、だいたいの予測で駅の位置を特定してみました。
この延伸構想による基本プランでは、全線が地下路線として示されています。
しかし、コスト削減プランを適用した場合は、千島公園(大正区役所付近)から先において長堀鶴見緑地線初の高架式での建設となる模様です。
延伸部建設計画
延伸が実現した場合、新たに4列車の増備が必要となります。
それに対応すべく、終端部である鶴町近くにある鶴浜に新たに車庫を設ける計画があり、鶴町二丁目周辺に「鶴浜車庫用地」という名目で、既に敷地が確保されているようです。
ただし、2025年度に売却されるという話もあるようです。
具体的な場所は不明ながら、車庫用地としてそれなりに纏まった土地、かつ「鶴町二丁目」であるという条件を考えると、車庫用地として活用するのは諦めたと見るべきでしょうか[1]
ただ、必要所要編成が4本と少ないことから、別途「コスト削減プラン」として、既存の鶴見検車場を増築して対応する可能性も示唆されています。
延伸区間 | 鶴町(四丁目)~大正 |
---|---|
駅数 | 6駅(大正を除く) |
建設延長/営業延長 | 5.3km/5.5km |
必要列車数 | 4列車 |
計画最大編成数 | 8両(コスト削減プランでは6両) |
車庫計画 | 鶴浜周辺に新設 (コスト削減プランでは鶴見検車場を増築) |
構造 | 全線地下式 (コスト削減プランでは大正区役所付近~鶴町間が高架) |
車両規格 | リニアモーター式 (既存の長堀鶴見緑地線と同様) |
延伸部運転計画
・朝ラッシュ時:3分~3分40秒間隔
・データイム時:7分間隔
・夕ラッシュ時:3分30秒間隔
採算性が厳しい
しかしながら、費用対効果(B/C比、1を切ると黒字化の見込みがない)が、基本プランで1.21とやや採算性が悪いことから、実現に至っていません。
審議会答申では「収支採算性および費用対効果(B/C)について検討したところ、その事業化の可能性に関しては、公営・民営に関わらず極めて厳しい試算結果が得られた。」とされており、事業化を行うためには「国の補助制度の抜本的な改善のほか、加算運賃の導入や都市開発との連携などによる需要の喚起・創出、運営費補助、あるいはそれらの組み合わせなどが必要である」と示されています。
また、審議会での検討において、鶴浜地区周辺の開発計画を考慮したケースも検討されておりますが、厳しい試算結果となっております。
交通局としましては、これらの結果を踏まえると、費用対効果や収支採算性が新線整備に必要な国の基準を満たしていないため、長堀鶴見緑地線の早期の事業化は困難であると考えております。出典:大阪市『市民の声 長堀鶴見緑地線の延伸について』
https://www.city.osaka.lg.jp/seisakukikakushitsu/page/0000432524.html
延伸部需要予測資料
こちらは、平成8年の大阪市交通局時代に、大阪市会で出された試算表です。
先ほどと異なりB/C比が2近くになっていますが、かなり甘めの需要予測に基づくものと思われます。
延伸区間 | 鶴町~大正 | |
---|---|---|
機種 | リニア式地下鉄 | |
営業延長 建設延長 |
5.5km 5.3km |
|
人口 常住人口 従業人口 流出入人口 |
81,269人 43,379人 71,639人 |
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地域整備状況 公的住宅数 S60以後公的住宅整備 |
32団地 約8,300戸 – |
|
交通現況 鉄道未整備地区面積 鉄道未整備地区人口 主要交差点渋滞時間 バス走行速度 |
6.91k㎡ 66,300人 9,600人/k㎡ – 15.4~18.4km/h |
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現況交通量 総量 マストラ利用者 沿線バス乗車人員 |
260,700人 57,000人 53,100人 |
|
将来輸送需要 | 74,700人 13,600人/km |
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建設費概算 | 1,380億円 (260億円/km) |
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費用対効果(B/C比) 30年 40年 |
公営1.92、民営2.01 | |
建設費概算 | 1,380億円 (260億円/km) |
出典:『条例路線の調査結果について』平成8年12月臨時会常任委員協議会(交通水道)-12月13日
その他
今回取り上げた鶴町延伸構想の他、運輸政策審議会答申第10号において、門真南から交野方面への延伸構想も示されています。
他の延伸構想データベース
参考資料
[1] 大正区役所、大阪港湾局「鶴浜地区の活用に関する住民説明会」令和6年6月20日
- 『「大阪市交通事業の設置等に関する条例」に位置づけられた未着手の地下鉄計画路線の整備のあり方について 』平成26年8月28日 大阪市鉄道ネットワーク審議会
- 『条例路線の調査結果について』平成8年12月臨時会常任委員協議会(交通水道)-12月13日
- 『第7号線(長堀鶴見緑地線)の延伸[鶴町~大正] 』大阪市
- 『「大阪市交通事業の設置等に関する条例」に位置づけられた未着手の地下鉄計画路線の整備のあり方について(答申)内、資料1-2 「大阪市交通事業の設置等に関する条例」に位置づけられた未着手の地下鉄計画路線の整備のあり方について(答申)(その2)』- 2014年8月30日