大阪メトロの終着駅は概ね、2種類の折返し構造に分けられます。
引き上げ線形
1つは「引き上げ線形」。
終点の更に奥まで線路を伸ばして留置線を作り、一旦そこまで回送し(引き上げ)てから再びホームにやってくるパターンです。
なお、文の里や新大阪など途中で折り返せるようにしている駅でも、この形状が採用されています。
引き上げ線形駅
谷町線大日駅
中央線コスモスクエア駅、長田駅
堺筋線天下茶屋駅(渡り線形との複合型)、天神橋筋六丁目駅
長堀鶴見緑地線大正駅
他。途中行先駅の全駅(中津、都島など)
渡り線形
もう1つは「渡り線形」。
終点駅手前にポイントを作り、そこで反対方向の線路へ転線するパターンです。基本的にはこちらの方がコスト面で安いことから主力です。
渡り線形駅
御堂筋線なかもず駅、江坂駅(片側のみ)
谷町線大日駅、八尾南駅
四つ橋線西梅田駅、住之江公園駅
千日前線野田阪神駅、南巽駅
堺筋線天下茶屋駅(Y線折返し形との複合型)
長堀鶴見緑地線門真南駅
今里筋線井高野駅、今里駅
ニュートラムコスモスクエア駅、住之江公園駅
どちらかに統一すればいいのに、何故両方が混在しているのでしょうか。
統一しないのは何故?
基本的に終着駅は渡り線形が理想といえますが、土地の状況や線路形状上で設計が難しいパターンと、将来的な延伸を見越して予め作っておくパターンなどで引き上げ線型が採用されるケースがあります。
例えば中央線のコスモスクエア駅。
ここは大阪港駅側に急勾配があり、渡り線式にすることが困難だった…という記述があります。1).
「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」に、転轍機(ポイントのこと)は勾配が25‰以上だと設置出来ないというルールがあるそうで、これに則ると確かにコスモスクエア駅は設置が難しかったと言えるでしょう。
また長堀鶴見緑地線の大正駅は終点にも関わらず「引き上げ線形」を採用しています。
これは、地上部が道路交通の要塞(大正通交差点)で開削工法が難しいこと、リニア地下鉄特有の急曲線があり勾配も激しいことから、このような形態になったものと思われます。
変わったところでは、天下茶屋駅(1番線)は、優等列車用ホームとして準備されたことから引き上げ線形となっており、現在はそういった計画もないことからやや持て余し気味となっています。
また、社局上は終着駅でもそのまま相互直通運転をする場合は当然ながら奥に線路が必要となるので、Y字形(引き上げ線形)になります。
長田や天神橋筋六丁目がこれに該当します。
関連リンク
参考文献
- 電気車研究会『鉄道ピクトリアル No744【特集】大阪市交通局』「大阪港トランスポートシステムの鉄道事業」橋本博、2004年