時は1989年。バブル時代真っ盛りのこのご時世に未来の鉄道計画を国主導で話し合う「運輸政策審議会」が開かれていました。
そこで出た未来の路線図計画が、もし全て実現していたら…というのが上のマップです。
細線が既存路線、太線が計画路線、実現しているものを白文字で、まだ実現していないものを灰色文字で描きました。
あの時から30年。おおよその実現率は半々といったところでしょうか。
ここでは大阪メトロと、それに連なる北大阪急行・近鉄けいはんな線について解説します。
それ以外の関西の私鉄については「鉄道プレス」にて書きましたので、そちらをご覧ください。
現在工事中のもの
北港テクノポート線(工事中・2024年完成)
路線区間:コスモスクエア~北港南~北港北 …此花方面
現在のコスモスクエアからの延伸ルートです。夢洲で行われる大阪万博へ向けて現在建設が進められ、2024年に開業予定となっています。あわせて、夢洲内には車庫も設けられます。
当初はもう少し東側にある北港を経由する予定でしたが、夢洲での万博開催に伴って現在は西側の島である夢洲・舞洲を通過するルートとなりました。
北大阪急行延伸(工事中・2023年完成)
路線区間:千里中央~箕面中部
こちらも2023年開業予定として現在建設中の路線。箕面萱野駅・箕面船場阪大前駅が開業します。
当初は2020年開業予定でしたが、千里中央駅先に謎の遺構が発見されるなどしたことから3年延期されました。
大阪市交通局がプランを検討してたもの
以下の4路線については、当時の大阪市交通局が実現へ向けてデータの試算や車庫設置用地、運転計画などを具体的に検討していた路線です。
9号線
路線区間:住之江公園~喜連瓜破
大阪市営地下鉄・大阪メトロ最後の新規地下鉄として構想されている路線。構想としては長らく存在しますが実現の可能性はかなり低いものと見られます。
長堀鶴見緑地線と同じくミニ地下鉄での建設で、車庫は長居公園地下に設けられる予定となっています。
一部で「ニュートラムを延伸させるのでは?」という意見もありますが、東西方向に走る路線で日照権の問題が解決出来ない為にプランとしては採用されていません。
9号線に関する詳しいデータは別記事で書きましたのでこちらをご覧ください。
千日前線の延伸
路線区間:南巽~弥刀
千日前線の未成路線。当初予定していた平野への延伸は谷町線が果たしたことから、千日前線は東向きへと進路を変えて近鉄弥刀駅を目指す予定です。
完成の際には久宝寺緑地地下に車庫を設ける予定となっています。
千日前線弥刀延伸プランに関する詳しいデータはこちらの記事をご覧ください。
今里筋線の延伸
路線区間:今里~湯里六丁目
今里筋線の未成路線。今里開業後は引き続いて湯里六丁目方面の工事に着手する予定でしたが、当時の関市長が事業性の悪さを鑑みて凍結。
地下鉄を建設すべきかどうか微妙な乗降客数のため、現在は試験的にBRT「いまざとライナー」を5年間走らせて様子を見ている最中です。
今里筋線湯里六丁目延伸プランに関する詳しいデータはこちらの記事をご覧ください。
長堀鶴見緑地線の延伸
長堀鶴見緑地線には2つの延伸構想があります。
①鶴見緑地~茨田~交野方面
②京橋~大正~鶴町
このうち、①の茨田は門真南駅として開業。②のうち、京橋~大正も1997年に開業しています。
残る区間のうち、交野方面は「将来的に路線整備を検討する方向」と曖昧な表現に留められている一方、大正~鶴町については「2005年までに整備に着手すべき路線」とかなり具体的な言及となっています。
しかしこの路線も事業性の悪さを理由に、2020年現在でも着工には至っていません。
長堀鶴見緑地線 鶴町延伸プランに関する詳しいデータはこちらの記事をご覧ください。
まだ構想段階のもの
一方、こちらはまだ構想段階の「将来的にこうなったらいいな~」ぐらいで留められている路線です。
谷町線の延伸
谷町線には2つの延伸構想があります。
①大日~鳥飼~高槻方面
②八尾南~藤井寺~富田林方面
現在でも大阪メトロで最も長い地下鉄路線の谷町線ですが、これが開業すると更に長い地下鉄へと変貌します。
急行運転なども考える必要が出てきそうなプランですね。
実現したもの
ここまではまだ完成していない路線を書きましたが、ここからは実現した路線を紹介していきます。
堺筋線の延伸
動物園前~天下茶屋の延伸部分です。
地上の道路が狭くて地下鉄を通すスペースがないことに問題があったものの、上下二層にするという当時としてはかなりの力技を使って1993年(平成5年)に開業しました。
南港テクノポート線
現在の中ふ頭~大阪港間にあたります。
当時は全区間をニュートラムとして一体的に建設予定でしたが、大阪港~コスモスクエア間は輸送量が大きいと予想されたことから、ここだけは地下鉄規格(中央線)の延伸となっています。
またこの区間は、大阪市交通局ではなく第三セクター「大阪港トランスポートシステム(OTS)」の路線として開業しました。
今里筋線 北半分
今里筋線は上新庄~太子橋今市~湯里六丁目間が構想路線ですが、このうち起点を上新庄から井高野に変更、途中の今里まを第1期線として2006年に開業させています。
先述したように、湯里六丁目への延伸は需要に疑問符があることから、現在BRT「いまざとライナー」としての運行が試験的に行われています。
京阪奈新線
生駒~高の原間が予定区間。そのうち、2006年に学研奈良登美ヶ丘までが開業しました。
総評
いかがでしたでしょうか。もしバブル期に計画された通りだったら、ここまでに紹介した地下鉄が全て完成していることになります。
このプランは、2004年に開催された「近畿地方交通審議会答申第8号」という審議会でいくつか修正され、現在では白紙になったプランもあります。
個人的には、9号線と既存3路線の延伸は是非とも見てみたいものですが…まずは大阪の求心力を取り戻すところからですね。
この地下鉄プランが全て完成するような、そんな未来が来たらいいですねぇ。
関連リンク
参考文献
運輸政策審議会「大阪圏における高速鉄道を中心とする交通網の整備に関する基本計画について(抄)(答申第10号)」、平成元年5月31日